【女医がマンガで解説】自律神経失調症の治し方は、意味がない!?

【女医がマンガで解説】自律神経失調症の治し方は、意味がない!?

◆ 自律神経失調症には意味がない!?

あなたは、「自律神経失調症」という病気をご存知でしょうか?

実際に当院にも
「他のクリニックで自律神経失調症と言われた」
「自律神経失調症と診断されたが、どう治せばいいですか?」
という方がよくいらっしゃいます。

自律神経失調症。

おそらく誰もが「聞いたことがある」と思う病名だと思います。

しかし、ここで重要なことを言います。

自律神経失調症、という病気は、実は「意味がない」診断名です。

そもそも「自律神経」ってなんでしょうか?

◆ 自律神経って何?


文字通り、「自分で律する神経」、もっと言えば「人間の意のままにならない神経」です。

たとえばですが、手をあげようと思ったら、手は持ち上がりますね。
これは、手の運動神経を、自分の意志で刺激した、ということになります。

では「心臓を止める」ことはできますでしょうか。

できませんね。いたら奇跡です。(ダメな意味で)

または「意図的に汗を止める」とか「鳥肌を作る」とかもできませんね。

いえ、すごく精神集中するとか、深呼吸するとか、何かを想像するとか…。
そういう裏技はありえると思います。
 
しかしそれって、すごい訓練してはじめて可能なことで、普通はできません。

このように、人間の意志ではどうにもならない、勝手に動いている神経こそが「自律神経」です。

◆ 自律神経は重要だけど…

当然ですが、この自律神経が働かないと、人間は困ります。
心臓は意志に無関係で動いてほしいですし、暑かったら汗を出して、体温を下げてほしいです。
また「食べ物の消化」だって、勝手にやってほしいです。

いちいちこれが、脳による命令制だったら、寝てしまったときに死んでしまうかもしれません。
また胃の中で食事が消化されないまま詰まってしまうかもしれません。

すべて、勝手に行われるわけで、だからこそ私たちは、穏やかに生きていられます。

で、この自律神経の働きが、うまく行かなくなった(=失調)のが「自律神経失調症」です。

◆ 何も言ってなくないですか?

えっと、ここまで聞いてどう思いましたか?

「何も言っていない」に等しい病名だと思いませんでしたか?

そもそも自律神経なんて、人間の体中を占めています。
心臓の神経なのか、発汗の神経なのか、胃腸の神経なのか…。

もう、めっっっっちゃくちゃたくさんあるわけです。

それが失調したよ、と。

たとえるなら、何かの事件が起こったときに、探偵が「犯人は、地球上にいる人間の誰かだ!」って言うみたいな。
いや知ってるから! そんなの!
コナンの毛利小五郎さんでも、もうちょっとマシな推理すると思います。

そんなレベルのアバウトさです。

ではこの診断名が、どういう時に出るか。
たいてい「内科的な疾患について調べてみたけど、明確に悪い部分が見つからない。でも患者本人は不調を訴えているようだ」という場合。

こんなとき、原因が分からない、というのもカッコ悪いので

「となると、自律神経のどこかで失調しているのかもしれませんね。すなわち自律神経失調症ですね」

と伝えているわけです。

重ねて「何も言っていないに等しい病名」です。

◆ 人は病名がつくと満足する。 

とはいえ、多くの患者さんは、病名がつくと、結構満足します。

犯人が特定されるとスッキリする、みたいなのに近いです。(実際はぜんぜん特定されてないんですけど)

そういう意味で、患者さんが一瞬は安心できます。便利な病名です。

 

または純粋に、それこそ「うつ病」などの精神疾患などの可能性もあります。
「心気症状」というものがありますが、精神的に落ち込むと、体の病気ではなくても、身体不調になることはあります。

そんなときに、「心の問題がある」というと、患者さんが気にしてしまう(それでかえって悪くなる)ことが多いので、
「自律神経失調症」こと「神経の問題だよ」と伝えてあげるわけです。

そうなると、人によっては落ち着きます。 

ただどんな場合でも、「じゃあ自律神経失調症をどう治せばいい? どうやったら自律神経がもとに戻る?」と悩みだすと、いうまでもなく「答えがない」ので、より悩んでしまうわけです。

【女医がマンガで解説】自律神経失調症の治し方は、意味がない!?

◆ 気にしないのが一番。

いずれにしても、自律神経失調症、という病名をどこかで告げられることがあっても、あまり気にしないのが一番ではないかと思います。

そして原因として「心の問題」があるとするなら、やはりそのときは、心療内科や精神科の受診をするのがオススメ、ということになります。

あなたの疑問や心配に、少しでも解決が見いだせれば幸いです。

 

今回のまとめ

  • 自律神経失調症、という病名には意味がない。
  • ただもしそれが「心の問題」なら、それは心療内科や精神科で解決する。

 

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
何か少しでも参考になることがあれば幸いです!

(完)

官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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特別監修・ゆうきゆう
精神科医、心理学者。
東京大学医学部医学科を卒業後、うつ病・統合失調症・てんかん・パニック障害・社交不安障害・不眠症など多くの疾患の治療を行い、2008年よりゆうメンタルクリニックを開院。
『マンガで分かる心療内科』の他、100冊以上の著作があります。

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