◆桐島、部活やめるってよ 精神科医のネタバレ解説

こんにちは。ゆうきゆうです。

さてつい最近、「桐島、部活やめるってよ」という映画を今さらながらに見ました。

ネタバレを含む内容となっております。
今さらネタバレを気にする方は少なさそうなのと、あとネタバレが重大になるミステリアスなストーリーとかでもないので、ぜんぜん関係ない気がするのですが、ネタバレを気にされる方はお気をつけください。

さて映画の話はシンプルです。
バレー部のエースで学年のアイドルを彼女にもしている、誰もがうらやむ桐島くんが、突然にバレー部をやめて彼女とも連絡が取れなくなって、学年中に動揺が走るという内容です。
映画の最初から最後まで、桐島くんは画面に明確には出てきません。
強いて言えば、テーマは「価値観のゆらぎ」でしょうか。

この映画には、メインの主人公が二人います。
それこそが、前田くんとヒロキくん。

映画部の前田くんは、いかにもオタクっぽい雰囲気(俳優は美形なんですけども)で、スクールカーストの中でも最下層。
カースト上位の運動部の男子たちにはバカにされ、女子たちにも軽く扱われています。
くわえてマニアックな映画を見に行った際に、たまたま同じ映画を見ていた女子にほんのり恋心をいだいたところ、その女子は実はモテ男子とつきあっており、その男子に待ち合わせをすっぽかされたため、しかたなくその映画を見ていただけ、と判明するという結構切ない展開もあります。

とはいえ、その前田くんだけは、桐島くんが部活をやめる、ということにも一切動揺せず、ただ変わらず映画を撮り続けていました。
特に「将来は映画監督になるのか?」と(ヒロキくんに)問われて、
「そんなことは関係ない。ただ映画を撮っているこの行為が良いんだ」
というように答えています。

逆にスポーツ万能でモテてもいるヒロキくんは、周囲からうらやましがられるスクールカースト上位の存在。
しかし桐島がやめたことで動揺し、自分の価値観を見失っていました。

そんな中、その前田くんの生き方を見て、自分にはそんな「ただこれをしていればいい」というものが何もなかったことに気づきます。
そして今まで自分が何も見つけてていなかったことを痛感して涙します。
そしてあらためて自分の人生を生き直していく…というのがラストです。

劇的に何かが起こってドキドキハラハラ、という話ではないのですが、そんなじんわりした青春時代のドラマ、という映画でした。

自分がこの映画を見て感じたことは3つあります。

◆ 1 大人でも起こる価値観のゆらぎ。

まず、テーマでもある、「価値観のゆらぎ(喪失)」

実際にこれ、大人になってもこの状態に陥る人はたくさんいます。
頑張って会社に入ったのに、自分のやりたいことがよくわからなくなってきた……。
望んだ仕事についたのに、なんだか思った内容と違った……。

そんな悩みを抱えて「うつ」になって、メンタルクリニックを訪れる方はたくさんいます。
特に気づいたこととして、社会人になった直後、また大学院などに進学した直後にうつになる人が多いな、という印象がありました。

特に学生時代は、勉強の成績さえ高ければ、その後の進学や就職は結構何とかなります。
または部活で優秀な成績さえあげれば、推薦や面接などで良い結果を得られるかもしれません。

ただ社会人になると、そういう「これさえOKなら良い」というものが存在しづらくなります。
特に職場においては人間関係なども存在しますし、また仕事も、給料だけでなく、職務内容や職場環境などふくめて、色々な要素が存在します。

くわえて30歳や40歳など人生の節目を越していくたびに、「自分は何を求めて生きてきたんだろう」「自分が今立っている場所は、果たして昔望んでいたものなんだろうか」なんてふうに考えてしまうこともあります。

それもあって、価値観のゆらぎ(喪失)というのは、大人になっても大きな、いえより大きくなるテーマなのかもしれません。
それもあって、この映画は結構話題になったと考えることもできます。

そんなときに重要なのは、とりあえず「すごくシンプル」に考えてみること。
映画内で、前田くんが映画を撮ることそのものを喜びとして考えていたように、

「この仕事のここが好き」
「こういう楽しい瞬間があるからそれでいい」

なんて風に考えたり、また

「好きな人がいるからいい」
「子供と過ごせているから大丈夫」

など、自分の人生で一点でもいいので、小さな「好き」や「ちょっと気が向くこと」を集めていくといいかもしれません。

とりあえず、精神科医として一番感じた点はこちらです。

◆ 2 スクールカーストと男女

ちなみにあと二点はこれにくらべたら蛇足です。ヒマでしょうがない方はお読みください。

一言でいうと、とりあえず学生時代の男女関係って大変だな、と思いました。
特にスクールカーストの下層に行くと、女子との関係は色々ハードだなと。

ちなみに自分が通っていた中学・高校はとても特殊で、

中学一年~高校二年は男女が別の校舎。授業も別。
高校三年だけ男女が一緒の校舎。授業も一緒。

というシステムでした。
今から考えると、色々謎です。
そこまで別ならラストまで別にしてほしい。

実際に、高校3年生で男女関係がうまく行っていた人たちほど、ずんずん成績が落ちていき、大学入試で失敗している確率が増えていました。特に男。

自分は幸か不幸か何もなかったので無事に大学に行けました。自分でも本当に何が正解なのかわかりません。

なんにせよ、共学の学校は、それはそれで苦労が多そうだな、という赤ちゃんレベルの感想をいだきました。

◆ 3 やめたときの反応

3つ目も結構どうでもいい感想です。

タイトルにもなっている桐島くんが部活をやめることで、学年中を巻き込む騒ぎになりました。映画にもなるレベルの事件だったわけです。

いやね、やめるだけでここまでのインパクトあるってすごいですよね。
現代でも、超人気アイドルとかアーティストとかだと、やめるというだけで一大ニュースになりますからね。
自分もそんなレベルになりたい。

「ゆうき、作家活動、やめるってよ」

誰も話題にしない。一切の動揺も走らなさそうです。
これはこれで切ない。

やめたときに少なくとも、ちょっとした動揺が生まれるくらいの人気と知名度が出るまではやめてたまるか。
そんなふうに思いながら、たぶん死ぬまで頑張ろうと思う次第です。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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特別監修・ゆうきゆう
精神科医、心理学者。
東京大学医学部医学科を卒業後、うつ病・統合失調症・てんかん・パニック障害・社交不安障害・不眠症など多くの疾患の治療を行い、2008年よりゆうメンタルクリニックを開院。
『マンガで分かる心療内科』の他、100冊以上の著作があります。

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