【女医が絵で解説!】心療内科と精神科の違いは?

【女医が絵で解説!】心療内科と精神科の違いは?

◆ 心療内科と精神科の違いは?

「心療内科と精神科の違いは?」

多くの方がそんな疑問を抱きます。
実際に当院にも、そのキーワードで検索されてサイトを訪問される方が多々いらっしゃいます。

ではいったい、心療内科と精神科の違いは何なのでしょうか?

それについて明確に説明しておきます。

まず、答えから言います。

心療内科と精神科の違いは「実際、ほぼない」です。

いえ、それで納得できるという方は少ないと思いますので、解説しましょう。

◆ 精神科とは? 

まず「精神科」は、ものすごく歴史が古い科目です。

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こちらは精神科で一番有名だと思われる絵画。

都内の大きな精神病院などにも象徴的に飾られています。

果たしてこの絵は、何をしているところでしょうか?

 

その説明のためには、まず「重度の精神疾患」の方について説明しなくてはなりません。

重度の精神疾患。
そこには統合失調症や認知症など色々な病名がありえますが、大半において会話が成立せず、また妄想や幻聴などに支配されて、突然に暴れ出したりする状態です。

当時は、医療も未発達で、人権という概念もなかった時代です。

彼らの多くは、閉じ込められたり、鎖につながれたりしていました。
そのため、「このままじゃダメだ!」として鎖から開放したのが、ピネルさんという精神科医。1793年ころのエピソードです。
↑の絵で、センターの女性の左に立って、ステッキを持っている男性です。女性の右の男性に命じて、鎖を外させているわけですね。

そしてセンターにいて、ちょっとかっこいいポーズの方は、まさに鎖を外された精神疾患の方になります。
ポーズの美しさもふくめて、自由な人生を象徴しているのかもしれません。

このように、精神疾患のある方にたいして、ただ鎖につなぐだけでなく、きちんと向き合って治療をしていこう、というのが「精神科」の学問になります。

すなわち、この絵がそもそもの起点となっている、とも考えることができるわけです。

とはいえ、ここで間違えてほしくないのですが、一般的な精神疾患は、本当に多岐にわたります。

重度の疾患ではなく、純粋に「軽いうつ」という方もいますし、緊張しやすかったり、眠れなかったり、という症状も広く含みます。
言うまでもありませんが、そういう方と、この絵レベルの方は別です。
「自分もこうなのでは!?」とネガティブに考えないでください。

ただ「スタート」がそういうエピソードだった、というだけです。

いずれにしても、「精神科」とは、精神の病気を全般的に扱う科目です。

今あげた例にもなりますが、
・うつ病
・不眠症
・パニック障害
・ADHD
・統合失調症
・認知症
などなど…。心に関する病気、ほぼすべてを扱います。

◆ 心療内科は?

では心療内科はどうか。

そもそもなのですが、心療内科という科目があるのは、「日本とドイツだけ」とされています。

一言で言うと「(心療)内科」こと、内科の一形態であって、
「心の原因で、内科的な疾患が出ている方」
を治療するための科目です。

たとえばストレスを理由として食事が摂れず、体がどんどん弱っていっている…。
悩みがあまりに強く、胃腸の調子が悪い…。

端的に言えば、そのような症状の方が行くのが、「心療内科」になります。

まさに「内科」ありき、の科目ということがわかっていただけるでしょうか。

また心療内科の歴史は、精神科に比べたら比較的新しいです。
内科的な治療だけでは対処が難しい患者さんに、心からアプローチをしよう、として始まっています。

とりいそぎ、これらが「始まり」です。

◆ さらに話は複雑に!

しかし、ここから話が少し複雑になります。

ここで「心療内科」は、かさねて「内科」なわけですが、ただみなさんの多くは、
「軽い精神科」くらいのイメージを持っていませんでしょうか。

そして「精神科はかかりづらいけど、心療内科なら行きやすい」というイメージを持っているかたも多いはずです。
まさに心療内科の意味合いが、人々の中で、大きく変わっているのです。

いえ、そもそも心療内科という言葉の正確な定義が、あまり世間に知られていないのが原因かもしれません。
 

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ここで、言葉の話になりますが…。

言葉って実際に「そう使われている」方が主流になりますよね。

たとえば「壁ドン」という言葉も、最初は「隣の部屋の人がうるさいときに壁をドンと叩く」というのが最初に使われていた意味でしたが、いつのまにか「男性が女性のヨコで壁をドンとして迫る」みたいな意味として使われてしまい、そっちが定着してしまいました。

個人的に「心療内科」も、それに近いんじゃないかと思っています。

いずれにしても、多くの患者さんが心療内科を「ライトな精神科」と思っており、そして精神科のドクターも、そのイメージを理解しておりますので、受診のしやすさのために、「心療内科」という名称を標榜することが多くなっています。

おそらく、日本すべてのメンタルクリニックが、「心療内科・精神科」と標榜していると思います。

だからこそ、最初に話した「心療内科と精神科の区別はほとんどない」ということになるのです。

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◆ 心療内科医 涼子というドラマ

やや余談ですが、こちらのドラマをご存知でしょうか?

心療内科医 涼子 1

これは「心療内科医 涼子」というドラマです。
心療内科が日本で話題になり始めたころに放映されました。

ちなみにこのドラマで扱われた疾患は、このようになります。(wikipediaから引用しています)

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えっとですね、これ、精神科医である自分からしても
「いやこれ心療内科じゃなくて、精神科の疾患ばっかりじゃない?」って思うのです。

依存症とかパーソナリティ障害とかありますしね。
内科ではなく純粋に精神科のジャンルではないかと。

で、実際にwikipediaによると、一般視聴者や心療内科医の先生もそう思われたそうで、番組に抗議があったそうです。
内容として、このようなものがあったそうです。

取り上げる病気が不適切(心療内科ではなく、精神科が扱う病気)。

その病気の描写があまりにもセンセーショナル。(心療内科の患者が心療内科に行きにくくなる)

現実の医師は、涼子のような行動はとらない。

いや、うん。あのね。

正直「現実の医師は涼子のような行動はとらない」とかは、すごいイチャモンだなと思うんですが。

ブラックジャック読んでその通りの行動をする医師ばっかりだと思う人がいるんだろうか。
彼、自分で自分のオペとかしてましたからね。できるかっていう。

何にせよ、取り上げる病気が、心療内科ではなく精神科、というツッコミはたしかに存在していたようです。

実際に「厳密に心療内科」というと、重ねて「内科」的なものがメインになってしまうため、ドラマを続けるほどのバリエーションが不可能なのかもしれません。

◆ 心の問題は、心療内科・精神科に!

何にせよ、一般的に、心療内科は「軽い精神科」というイメージがあるのは事実。
よってクリニックの標榜科に「精神科・心療内科」とあれば、心のこと全般を扱っているクリニックだと思っていただければ幸いです。

ちなみに当院も、「心療内科・精神科」です。

 
ただ、当然ですが、内科を研修し、その一分野としての心療内科に進まれた先生の中には、もちろん
「いや、心療内科はあくまで内科の一分野だ、軽い精神科などではない!」
と考えてらっしゃる方もいると思います。気持ちはすごく分かります。

そういう先生がクリニックを開かれている場合、「精神科」の表記がなく、「心療内科・内科」などのように書いてあることが多いです。
この場合、内科の先生が、内科の疾患をメインに診察しつつ、心の面もアプローチをしているクリニックかと思います。

ですので、もしあなたが、胃腸の不調など、「内科」的な症状が強いのならば、「心療内科・内科」と書いてあるクリニック。
そのような症状はほとんどなく、心の不調ならば「心療内科・精神科」のクリニックを訪れることをオススメします。

以上、歴史から、心療内科・精神科の違いについて扱ってみました。

まとめ。

  • 心療内科と精神科の歴史は大きく違う。
  • 精神科は心をメインにした科目。
  • 心療内科は内科の一つ。
  • ただ一般的なイメージもあり、心療内科は「軽い精神科」というイメージに変わってきている。
  • よってもしあなたが、心の悩みがあれば「心療内科・精神科」のクリニックに行くべき。
  • 胃腸の不調などの内科的な疾患が強いならば、「心療内科・内科」のクリニックに行くべき。

 

以上、いかがでしたでしょうか。

実際に当院で作っている「マンガで分かる心療内科」も、「心療内科」ではありますが、実際は「精神科」の疾患が大半です。
サイトから無料でも読めますので、よろしければ、ぜひご覧いただければ幸いです。

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何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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特別監修・ゆうきゆう
精神科医、心理学者。
東京大学医学部医学科を卒業後、うつ病・統合失調症・てんかん・パニック障害・社交不安障害・不眠症など多くの疾患の治療を行い、2008年よりゆうメンタルクリニックを開院。
『マンガで分かる心療内科』の他、100冊以上の著作があります。

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