
整形外科や内科で精密検査を受けても「特に異常はありません」と言われるのに、全身や関節、筋肉に激しい痛みが続く……。こうした原因不明の慢性痛に悩まされている方は少なくありません。
周囲に「気のせい」「気にしすぎ」と言われ、痛みやつらさを理解してもらえず、孤独感や不安を抱えてはいませんか?
しかし、それは決してあなたの心が弱いからではありません。ストレスや疲労によって脳のペインコントロール(痛みの調整機能)が乱れ、実際に身体へ痛みとして現れる「身体表現性障害(身体症状症)」という医学的な状態なのです。
この記事では、原因不明の全身の痛みや慢性痛が生じるメカニズムと、最新の知見に基づいた対処法、そして心療内科を受診するべき目安について、専門用語をわかりやすく噛み砕きながら解説します。
📝 この記事のまとめ(お急ぎの方へ)
- 原因: 慢性的なストレスや疲労、自律神経の乱れ、脳の痛み感知システム(中枢性感作)の誤作動。
- リスク: 痛みへの不安から不眠や抑うつを併発し、生活の質(QOL)が著しく低下すること。
- 対処法: 適切な休養、痛みに意識を集中させない工夫、心療内科での薬物療法や認知行動療法。
- 受診の目安: 各種検査で異常がないにもかかわらず、2週間以上全身の痛みや慢性痛が続いて生活に支障が出ている場合。
身体表現性障害(慢性痛)が生じる「3つの医学的要因」
画像検査や血液検査で「異常なし」と判定される痛みの背景には、身体の組織損傷ではなく、神経系や脳の機能的な変化が隠れています。
1. 脳の中枢性感作(痛みのボリュームが上がった状態)
長期間のストレスや過労が続くと、脳や脊髄などの「中枢神経」が過敏になります。これを医学的に中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)と呼びます。通常なら感じないわずかな刺激や、触れられただけの感覚を脳が「激しい痛み」として誤認・増幅してしまう現象です。
2. 自律神経の失調と血流障害
ストレスを受けると交感神経(興奮や緊張を司る神経)が過剰に優位になります。すると全身の血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉の緊張や酸素欠乏を引き起こします。この発痛物質の蓄積が、全身の慢性的な痛みを生み出します。
3. 心理的ストレスの「身体化」
自分のつらい感情や過度な緊張を意識上でうまく処理しきれないとき、体はそのSOS信号を「身体症状」に変換して表現することがあります。これが身体表現性障害(特に疼痛障害や身体症状症)の代表的な機序です。嘘や思い込みではなく、実際に身体的な痛みとして感覚が伝わっています。
今のあなたの状態は?セルフチェックリスト
以下の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。
- ☑ 内科や整形外科で検査を受けても「問題ない」と言われる
- ☑ 日によって痛む場所が変わったり、全身に痛みが広がったりする
- ☑ 天候、ストレス、不安を感じたときに痛みが強くなる
- ☑ 痛みへの不安から仕事や家事、外出がおっくうになっている
- ☑ 痛みのせいで眠れない、あるいは夜中に何度も目が覚める
身体表現性障害・慢性痛の悪化を防ぐ「3つの医学的アプローチ」
1. とにかく寝る・休むことを最優先にする
睡眠不足や慢性疲労は、脳の神経系を感作(過敏化)させる最大の要因です。まずは「しっかり休息をとること」を自分に許可し、自律神経の副交感神経(リラックスモード)を高めましょう。
2. 「自分を責める言葉」をストップする
「このくらいの痛みで仕事を休んではいけない」「気持ちが弱いから痛むんだ」と自分を責めると、脳内でストレスホルモン(コルチゾール等)が分泌され、痛みの伝達経路がさらに強固になってしまいます。「つらいときは休んで当然」と捉え直すことが大切です。
3. 意識を痛みからそらすアプローチを取り入れる
痛みに意識を集中させ続けると、脳の痛みを司る領域が活性化し続けます。無理のない範囲で好きな音楽を聴く、ぬるめのお湯に浸かるなど、五感で「心地よい」と感じる体験を増やし、脳の痛み回路を鎮めましょう。
「ただの疲れ」と「病院に行くべきサイン」の違い
単なる一時的な肉体疲労と、専門的な治療を必要とする慢性痛・身体表現性障害にははっきりとした境界があります。
- 2週間以上、全身や体の一部に同じ痛み・違和感が続いている
- 睡眠(不眠・過眠)や食欲に影響が出ている
- 痛みのせいで仕事、家事、人間関係などの社会生活に大きな支障が出ている
精神的な症状や脳の神経系機能の乱れは、虫歯と同じで「気合で治る」ものではありません。放置すればするほど痛みのアナムネシス(記憶)が脳に定着し、回復に時間がかかってしまいます。
心療内科は「限界が来る前」に相談する場所です
心療内科は、完全に心が折れて動けなくなってから行く場所ではありません。「なんだか最近おかしいな」「痛みのせいで毎日がつらいな」と思ったタイミングで、予防として相談に来ていただいて全く問題ありません。
- ■ うまく話せなくても大丈夫です
- 痛みの状態やこれまでの検査結果などをまとめるのが難しくても構いません。話したくないことは無理に話さなくてOKです。医師がゆっくりとお話を伺います。
- ■ 薬は必ず飲まないといけないの?
- 症状に合わせて相談しながら決めます。痛みのシグナルを調整するお薬(抗うつ薬や抗不安薬、漢方薬など)を使う場合も、メリット・デメリットをわかりやすく説明します。環境調整(休養の指示書作成等)を中心に進めることも可能です。
💡 【あなたをサポートします】
「こんな原因不明の痛みで…」と一人で抱え込む必要はありません。あなたのつらい気持ちを、まずは私たちに教えてください。
当クリニックは、あなたの心と体に寄り添い、一緒に解決策を考えます。
よくある質問(Q&A)

この記事の監修者
ゆうメンタルクリニックグループ 理事長:安田 雄一郎
精神科医(精神保健指定医)・マンガ原作者
東京大学医学部卒業
世界中の人の心をラクにするために今日もメンタルクリニックで働いている医師。



























