
「朝どうしても起き上がれず仕事に行けない」「立ち上がった瞬間に激しい立ちくらみやめまいがする」といった症状に悩んでいませんか。起立性調節障害(OD: Orthostatic Dysregulation)は中学生や高校生など思春期に多い病気として知られていますが、実は大人になってから発症したり、幼少期からの症状が治らず社会人になっても続いたりするケースが少なくありません。
朝起きられない状態が続くと、「自分の気合いが足りないのではないか」「単なる怠けなのではないか」とご自身を責めてしまいがちです。
しかし、それは決してあなたの心が弱いからではありません。自律神経(体の機能を自動で調整する神経系)のバランスが乱れ、起立時に脳や全身への血流が十分に保たれなくなる「循環器系の機能障害」という医学的な病気が原因なのです。
この記事では、大人の起立性調節障害が生じるメカニズムと、最新の知見に基づいた対処法、そして何科を受診すべきか(診断できる病院の選び方)について、専門用語をわかりやすく噛み砕きながら解説します。
📝 この記事のまとめ(お急ぎの方へ)
- 原因: 自律神経(交感神経・副交感神経)の不調により、起立時に血管の収縮が上手くいかず、脳への血流が一時的に低下すること。
- リスク: 怠けと誤解されて休職や離職に追い込まれたり、二次的にうつ病や適応障害を併発したりするリスクがあります。
- 対処法: 水分・塩分の意識的な摂取、立ち上がる際の段階的動作、ストレスの軽減と自律神経の休養。
- 受診の目安: 朝起きられず社会生活に支障が出ている場合や、立ちくらみ・強い倦怠感が2週間以上続く場合は受診を推奨します。
大人の起立性調節障害が生じる「3つの医学的要因」
人が横になった状態から身体を起こすと、重力によって血液は下半身へ移動します。通常であれば、自律神経の「交感神経(体を活動モードにする神経)」が働き、血管を収縮させて血圧を維持します。しかし、何らかの理由でこのメカニズムが破綻すると、様々な症状が引き起こされます。
1. 起立性低血圧(自律神経による血管収縮の不全)
立ち上がった際、本来働くべき交感神経の反応が遅れ、下半身の血管が十分に収縮しない状態です。これにより血液が下半身に滞り、脳へ送られる血流が一時的に低下(脳貧血状態)するため、激しい立ちくらみ、めまい、意識が遠のく感覚が生じます。
2. 体位性頻脈症候群(POTS)
起立時に血圧の下落は目立たないものの、脳血流の低下を補おうとして心臓が過剰に動き、心拍数が異常に跳ね上がる病態(POTS: Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome)です。立ち上がるだけで激しい動悸、息切れ、胸の不快感、激しい倦怠感が現れるのが特徴です。
3. 精神的・身体的ストレスと過労による自律神経の中枢疲弊
大人の起立性調節障害では、職場や家庭での精神的ストレス、過重労働、不規則な生活習慣などが引き金となります。脳の視床下部(自律神経をコントロールする司令塔)が過剰なストレスで疲弊すると、交感神経と副交感神経(体をリラックスさせる神経)の切り替えがスムーズにいかなくなります。
今のあなたの状態は?セルフチェックリスト
以下の症状に心当たりがないかチェックしてみましょう。複数当てはまる場合は、大人の起立性調節障害の可能性が考えられます。
- ☑ 朝、体が重くてどうしても起き上がれず、目覚まし時計の音にも反応しにくい
- ☑ 急に立ち上がると、眩暈(めまい)や立ちくらみでクラクラする
- ☑ 午前中は頭がボーッとして集中できず、夕方から夜にかけて元気になる
- ☑ 立っていると動悸や息切れ、吐き気がして長時間立っていられない
- ☑ 睡眠時間は足りているはずなのに、強い倦怠感や疲労感が抜けない
大人の起立性調節障害の悪化を防ぐ「3つの医学的アプローチ」
1. とにかく寝る・休むことを最優先にする
自律神経系の回復には、脳と身体の休息が不可欠です。「休むことへの罪悪感」を一度手放し、夜間の十分な睡眠の確保と、日中も疲労を感じたら無理をせず体を横にする習慣をつけましょう。
2. 「自分を責める言葉」をストップする
「朝起きられないのは自分が甘えているからだ」という自己否定は、脳に強いストレスを与え、交感神経を過剰に緊張させて症状をさらに悪化させます。「今は身体の自動調整システムが故障しているだけだ」と割り切り、病気として受け止めることが回復への第一歩です。
3. 水分・塩分の補給と段階的な起立動作を行う
循環血液量を増やして血圧を維持するため、医師の指示のもとで適度な水分と塩分を補給することが有効です。また、ベッドから起き上がる際は「布団の中で足を動かす」「時間をかけてゆっくり体を起こす」など、血液が急激に下がらない工夫を徹底しましょう。
「ただの疲れ」と「病院に行くべきサイン」の違い
一時的な睡眠不足や過労による疲れであれば、週末にしっかり休息をとることで回復します。しかし、以下のような状態が見られる場合は、自力での回復が難しい段階に入っています。
- 2週間以上、朝起きられない・立ちくらみなどの症状が続いている
- 睡眠(不眠や過剰な眠気)や食欲に明らかな異常が出ている
- 朝起きられずに出勤や登校が困難になり、日常生活や社会生活に支障が出ている
自律神経の不調や精神的な症状は、虫歯と同じで「気合で治る」ものではありません。放置すればするほど回復に時間がかかってしまいます。
心療内科は「限界が来る前」に相談する場所です
心療内科や精神科は、完全に心が折れて動けなくなってから行く場所ではありません。「なんだか最近おかしいな」「仕事に支障が出ていてつらいな」と思ったタイミングで、予防として相談に来ていただいて全く問題ありません。
- ■ うまく話せなくても大丈夫です
- 自分の症状や現状について、まとまっていなくても構いません。話したくないことは無理に話さなくてOKです。医師がゆっくりとお話を伺います。
- ■ 薬は必ず飲まないといけないの?
- 症状に合わせて相談しながら決めます。薬を使わず、まずは環境調整(会社へ提出する休職や配慮依頼の診断書作成など)や自律神経を整える漢方薬で様子を見ることも可能です。
💡 【あなたをサポートします】
「こんなことで…」と悩む必要はありません。あなたのつらい気持ちを、まずは私たちに教えてください。
当クリニックは、あなたの心に寄り添い、一緒に解決策を考えます。
よくある質問(Q&A)

この記事の監修者
ゆうメンタルクリニックグループ 理事長:安田 雄一郎
精神科医(精神保健指定医)・マンガ原作者
東京大学医学部卒業
世界中の人の心をラクにするために今日もメンタルクリニックで働いている医師。



























