「急にボールが来た」では間に合わない? 『ブルーロック』から考える「運命」の受け取り方

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。
2026年8月7日、実写映画『ブルーロック』が公開されました。
『ブルーロック』は、「自分の運命を切り拓く」「世界一のストライカーになる」というテーマを持った作品です。
そんな『ブルーロック』を見ていて、私は「運命」というものについて考えました。
人生には、いつボールが飛んでくるか分からない。
でも、だからこそ大切なのは、
「ボールが来ることを予測する」ことではなく、「ボールが来たときに受け取れる自分でいる」ことなのではないか。
ということです。
「急にボールが来たから」という言葉
サッカーをあまり知らない人でも、一度は聞いたことがあるかもしれません。
「急にボールが来たから」
ネットで有名になったこの言葉の元になったのは、2006年FIFAワールドカップ・ドイツ大会のクロアチア戦。
日本代表の柳沢敦選手が決定機を逃した後に語った、
「急にボールが来たので」
という言葉です。
ちなみに柳沢選手はゴールキーパーではなく、FWの選手です。
この言葉は、その後ネットスラングとしても知られるようになりました。
ただ、これを人生に置き換えてみると、少し面白いと思いませんか?
人生では、いつボールが来るか分からない
サッカーでは、いつボールが来るか分かりません。
突然、目の前にボールが飛んでくる。
その瞬間に、
「えっ、急に来た!」
となっても、試合は待ってくれません。
もちろん、90分間ずっと全神経を張り詰めていることなんてできません。
だからこそ、スポーツでは練習を積み、ルーティンを作り、「ボールが来たときに対応できる自分」を作っておく。
これは、人生にも少し似ていると思います。
人生では、
いつ仕事のチャンスが来るか分からない。
いつ大切な人と出会うか分からない。
いつ新しい趣味に出会うか分からない。
いつ、自分の人生を変えるような作品や本に出会うか分からない。
そして、いつ自分が積み重ねてきた経験が、突然役に立つかも分かりません。
だから、人生では、
「ボールが来ることを予測する」より、「ボールが来たときに受け取れる自分でいる」
ことが大切なのではないでしょうか。
スポーツは「努力+最後の不確実性」の世界

スポーツの世界は、特にこの感覚が強いと思います。
一流選手は、ものすごい努力をしています。
練習する。
筋力をつける。
技術を磨く。
食事を管理する。
睡眠を管理する。
それでも、最後の最後には、
相手の動き。
天候。
ボールの跳ね方。
一瞬の判断。
その日の体調。
ほんのわずかな偶然。
そういった「自分では完全にはコントロールできないもの」が残ります。
トップレベルになればなるほど、勝負は「薄皮一枚」の世界になる。
だからこそ、最後に自分の心を整える必要があります。
一流選手がルーティンを大切にするのも、単純に「迷信深いから」ではないのかもしれません。
ものすごく努力した人ほど、
「最後には、自分ではコントロールできないものが残る」
ということを知っている。
だからこそ、自分がコントロールできる部分を丁寧に整える。
私は、そんな側面もあるのではないかと思います。
「運命」を待つのではなく、受け取れる自分になる
これは、キャリア心理学の「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」にもつながります。
これはジョン・クランボルツらが提唱した考え方で、簡単にいうと、
「人生やキャリアには、予想していなかった偶然の出来事が大きく影響する。だから、偶然を避けるのではなく、偶然をチャンスに変えられるようにしておこう」
というものです。
そのためには、
好奇心を持つ。
失敗しても続ける。
状況に合わせて柔軟に変える。
良い可能性を信じる。
不確実でも行動する。
といった姿勢が大切だとされています。
つまり、
「人生のボールがいつ来るかは分からない。
でも、来たボールを受け取れるようにしておく」
ということです。
「あの経験も、このためだったのかもしれない」
人生には、あとから意味が分かる出来事があります。
そのときは失敗だと思っていたこと。
無駄だと思っていた遠回り。
偶然参加したイベント。
たまたま出会った人。
なんとなく始めた趣味。
そのときには何の意味があるのか分からなくても、何年か後に振り返って、
「あれがあったから、今の自分がいる」
と思うことがあります。
もちろん、過去の出来事そのものが変わったわけではありません。
変わったのは、「その出来事に与える意味」です。
だから私は、「運命」というものを、最初からすべて決まっているものとは考えていません。
むしろ、
大切なものに出会ったあとに、過去を振り返って「これまでの出来事が全部つながっていた」と感じること。
それが「運命」と呼ばれるものなのではないかと思います。
人生のボールは、いつ来るか分からない
もしかしたら明日、人生を変える人に出会うかもしれません。
突然、仕事のチャンスがやってくるかもしれません。
偶然読んだ一冊の本が、自分の考え方を変えるかもしれません。
たまたま見た映画や作品が、自分の人生に残るものになるかもしれません。
でも、それを全部予測することはできません。
だから、
「いつ運命の人が現れるんだろう」
「いつ人生を変えるチャンスが来るんだろう」
と、ずっと待っている必要はないのです。
それよりも、
毎日少しずつ自分を整える。
興味を持ったことに挑戦する。
人と出会う。
勉強する。
好きなものを大切にする。
自分の得意なことを磨く。
そうしておけば、ある日突然、
「急にボールが来た」
という瞬間がやってきても、
「あ、これ、私がずっと準備してきたことだ」
と受け取ることができるかもしれません。
運命は、あとから見つかるもの
運命は、最初から目の前に置かれているものではないのかもしれません。
自分が歩いてきた道を振り返ったとき、
「あの人に出会ったのも」
「あの失敗をしたのも」
「あの場所に行ったのも」
「あのとき挑戦したのも」
「全部、このためだったのかもしれない」
と思える。
その瞬間に、過去の出来事が一本の線につながります。
だから私は、
運命とは「最初から決まっている未来」ではなく、「自分が受け取ったものに、あとから意味を与えていくこと」
なのではないかと思っています。
人生では、いつボールが来るか分かりません。
だからこそ、ずっと空を見上げてボールを待っている必要もありません。
今日できることを少しずつやっておく。
自分を整えておく。
そして、もし突然ボールが飛んできたら、
「急に来たから」
ではなく、
「来た。じゃあ、どうする?」
と動ける自分でいたい。
そんな生き方も、案外「運命を切り拓く」ということなのかもしれません。
「急にボールが来る」からこそ、お守りを持っておく
人生では、いつボールが飛んでくるか分かりません。
仕事で突然、大きな責任を任されるかもしれない。
思いがけず、大切な人と出会うかもしれない。
反対に、突然、不安が強くなることもあります。
眠れなくなる。
仕事に行くのがつらくなる。
人と会うことが怖くなる。
パニックのような症状が起こる。
そんなときまで、
「自分なら大丈夫」
「気合いで乗り越えよう」
と、一人で頑張り続けなくても大丈夫です。
医療の現場では、不安が強い方やパニック発作が心配な方に、医師が必要に応じて頓服薬を処方することがあります。
「もし発作が起きたら、この薬を飲めばいい」
そう思えるだけで、安心して外出できるようになる方もいます。
実際、
「薬を持っていると安心するので、結局一度も飲みませんでした」
とおっしゃる方も、決して珍しくありません。
不眠についても、
「眠れなかったら、この薬を飲めばいい」
と思えることで、かえって眠りやすくなる方がいます。
もちろん、薬にはそれぞれ医学的な作用があります。
必要なときには、医師の指示に従って適切に使うことが大切です。
一方で、
「これがあれば大丈夫」
と思える安心感そのものが、心や身体の状態に影響することもあります。
これは「プラセボ効果」や「期待効果」とも関連する現象です。
スポーツ選手がルーティンを持つように。
お守りを持つように。
大切な日に験を担ぐように。
人は、「自分を支えてくれるもの」を持っていることで、不確実な状況に向き合いやすくなることがあります。
だから私は、
「お守りを持っているから弱い」のではなく、「安心して前に進むためのお守りを持っておく」
という考え方もあっていいと思っています。
ただし、お守りだけでは抱えきれないほどつらくなることもあります。
眠れない状態が続く。
不安がなかなか消えない。
パニックのような症状が繰り返される。
仕事や学校に行くことが難しくなる。
気持ちが落ち込んで、何をするのもつらくなる。
そんなときは、「まだ頑張れる」と我慢し続けなくても大丈夫です。
「お守りが欲しいな」と思うくらい不安が強くなったら、それ自体が心からのサインかもしれません。
医療機関では、症状や生活状況に合わせて、薬だけではなく、心理療法や生活上の工夫なども含めて、一緒に対処法を考えていくことができます。
人生のボールが、いつ飛んでくるかは分かりません。
だからこそ、すべてを予測しようとしなくていい。
毎日少しずつ自分を整えておく。
困ったときに頼れる人を作っておく。
必要なら医療の力も借りておく。
そうしておけば、ある日突然ボールが飛んできても、
「急に来たから、もう無理」
ではなく、
「来た。じゃあ、どうする?」
と考えられるかもしれません。
運命は、最初から決まっているものではなく、来たボールを受け取ったあとに、自分で意味をつくっていくものなのかもしれません。
そして、そのための準備は、今日からでも始められます。
気になる症状がある方は、一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
取材実績(一部抜粋)
【TV】TBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」(『ドパガキ』について)
【WEB】Yahoo!ニュース(
スマホ一律禁止はNG?メンタルクリニックで増加傾向「ドパガキ」相談…専門医 “年齢別の付き合い方”指南「刺激の排除でなく、他の楽しさを失わないこと
)
【WEB】PRESIDENT Online(
カリッと焼いてかじるだけ…9月のメンタル不調者に不足する栄養素がとれる「スーパーにある食材」
)
【監修】大塚商会
「自分の状態を確認する簡単ストレスチェック」
【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』(
【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。
)
【YouTube】『かずのすけ』(
敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ
)
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
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