「夜中に突然、子どもが叫ぶ…」これって夜驚症? 原因・治療・親ができることを医師が解説

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。
先日、タレントの辻希美さんが、自身のYouTubeで「子ども2人が夜驚症になっている」と明かしたことが話題になりました。
辻さんによると、次男と三男に夜驚症があり、寝てから1時間ほどすると、泣いたり暴れたりすることがあるそうです。
本人たちはそのときのことを覚えておらず、体調が悪いときには症状が出やすいとも話していました。
三男については、泣いたり暴れたりするうちに、せき込んで吐いてしまうこともあるとのことです。(オリコンニュース(ORICON NEWS))
「夜中に突然、子どもが泣き叫ぶ」
「何を言っているのか分からない」
「抱きしめようとしても、こちらの言葉が届かない」
「しばらくすると何事もなかったように眠り、翌朝には本人がほとんど覚えていない。」
そんな経験をすると、
「何か怖い夢を見ているのかな?」
「学校で嫌なことがあったのかな?」
「精神的な病気なのでは?」
と、親御さんはとても心配になりますよね。
こうした症状の代表が「夜驚症(やきょうしょう)」です。
医学的には「睡眠時驚愕症」「Sleep Terrors」と呼ばれ、睡眠中に起こる「ノンレム睡眠時随伴症」の一つです。
実は、子どもの夜驚症は、必ずしも心の病気というわけではありません。
今回は、夜驚症の仕組みから、ご家庭での対応、薬や漢方、受診の目安、さらに必要に応じた福祉・療育についてお話しします。
◆そもそも夜驚症って、どんなもの?
夜驚症では、眠ってから比較的早い時間帯に、
・突然叫ぶ
・泣き出す
・起き上がる
・目を見開く
・汗をかく
・心拍数が上がる
・こちらの声かけに反応しにくい
・なだめても落ち着きにくい
といった状態になることがあります。
一見すると「悪夢を見ている」ように見えますが、実は少し違います。
悪夢は主にREM睡眠中に起こり、目が覚めたあとに「怖い夢を見た」と内容を覚えていることが多いもの。
一方、夜驚症は深いノンレム睡眠から脳が部分的に覚醒することで起こります。
脳の一部は「起きる」方向に動いているのに、別の部分はまだ深く眠っている。
いわば、脳が完全に起ききっていない状態なのです。
そのため、親御さんが一生懸命声をかけても反応が乏しかったり、翌朝になると本人が覚えていなかったりします。 (PubMed)
◆ なぜ起こるの?「怖い夢」が原因とは限りません

夜驚症の正確な原因は、まだ完全には分かっていません。
ただし、
・脳や睡眠機能の発達段階
・睡眠不足
・生活リズムの乱れ
・発熱や体調不良
・環境の変化
・ストレス
・睡眠を途中で分断する病気
・遺伝的な体質
などが関係すると考えられています。 (PubMed)
特に大切なのが「寝不足」です。
子どもは大人以上に睡眠が必要です。
「昨日ちょっと寝るのが遅かっただけ」
と思っていても、それが続くことで睡眠の構造が変化し、夜驚症が起こりやすくなることがあります。
つまり、
「怖いことがあったから夜驚症になった」
とは限らないのです。
もちろん、環境の変化や心理的ストレスがきっかけになることはあります。
ただ、夜驚症があるからといって、必ず「心に大きな問題がある」と考える必要はありません。
◆ 夜驚症が起きたとき、親はどうすればいい?
ここが一番大切です。
子どもが突然叫び始めると、親としては、
「起きて!」
「大丈夫だよ!」
「怖い夢じゃないよ!」
と、なんとか起こしてあげたくなりますよね。
でも、夜驚症の場合は、無理に起こそうとしないほうがよいとされています。 (PubMed)
大きな声で呼んだり、揺さぶったりすると、かえって興奮が強くなることがあります。
基本は、
「安全を確保して、静かに見守る」
です。
ベッドから落ちそうなら危険なものを遠ざける。
歩き出す場合は、ぶつからないようにそっと誘導する。
そして、できるだけ落ち着いた声で対応します。
多くの場合、しばらくすると自然に落ち着き、再び眠ります。
翌朝に、
「昨日また怖いことがあったね」
と詳しく聞き出す必要もありません。
本人が覚えていないことが多いからです。
むしろ、
「昨日は大丈夫だったよ」
くらいにしておくほうが、子ども自身が「自分は夜に変なことをしてしまう」と不安になりにくいでしょう。
◆ まず見直したいのは「睡眠」です
夜驚症への対策で、薬より先に考えたいのが生活リズムです。
例えば、
・毎日できるだけ同じ時間に寝る
・睡眠時間を十分に確保する
・寝る直前までスマートフォンやゲームをしない
・夕方以降の刺激を減らす
・発熱など体調不良があるときは無理をさせない
・寝室の危険なものを片付ける
といった工夫です。
「夜驚症を治す特別な方法」というより、脳が安定して睡眠できる環境を作るという考え方です。
実際、睡眠不足は夜驚症の誘因の一つとされています。 (PubMed)
また、何時ごろ起こるのかを「睡眠日記」に記録するのも役立ちます。
毎回ほぼ同じ時間に起こる場合には、その時間の約30分前に一度軽く覚醒させる「予防的覚醒(scheduled/anticipatory awakening)」が有効なことがあります。 (Mayo Clinic)
◆ 薬は必要? 漢方なら安心?
ここはよく質問されるところです。
結論からいうと、典型的な夜驚症では、薬を使わずに様子を見るケースが多いです。
研究レビューでも、多くの子どもでは安心して見守ること、睡眠環境を整えること、誘因を取り除くことが基本とされています。 (PubMed)
一方、非常に頻繁に起こる、けがの危険がある、日中の眠気が強い、家族の睡眠が大きく損なわれている、といった場合には、
医師が薬物療法を検討することがあります。
研究上は、重症例でクロナゼパムなどが短期間使用されることがありますが、
子どもの夜驚症には「まず薬を使う」という位置づけではありません。 (PubMed)
では漢方はどうでしょうか。
日本では、たとえば抑肝散が「夜泣き」や「神経過敏」などに使われることがあります。
抑肝散については、子どもの夜泣きや不眠などへの使用経験や基礎研究があります。 (PubMed)
ただし、
「抑肝散を飲めば夜驚症が治る」
とまでは、現在の研究から言うことはできません。
夜驚症そのものに対する標準治療として確立しているわけではないため、漢方も「自然のものだから誰にでも安全」という考え方ではなく、
症状や体質、ほかの薬との飲み合わせなどを含めて医師に相談して使うことが大切です。
◆ 「メンタルの問題?」と心配しすぎなくても大丈夫
夜驚症があると、
「学校で何かあったのでは?」
「親子関係に問題があるのでは?」
と、自分を責めてしまう親御さんもいます。
でも、夜驚症そのものは、子どもの睡眠発達の中で起こることのある現象です。
一方で、睡眠と子どもの心身の状態にはお互いに関係があります。
睡眠の問題が続いている子どもでは、日中の集中力や行動面に問題が出ることもありますし、逆に発達特性や不安などがある場合には睡眠についても一緒に確認したほうがよいことがあります。 (PubMed)
ですから、
「夜驚症だから問題がある」
でもありませんし、
「夜驚症だから絶対にメンタルとは関係ない」
でもありません。
睡眠と心身の両方を、一人の子どもとして見ることが大切です。
◆ 親御さんのケアも、とても大切です
実は夜驚症で一番疲れているのは、本人より親御さん……ということもあります。
毎晩、
「今日は起きるかな」
「また叫ぶのかな」
と緊張してしまう。
夜中に起こされて、翌朝は仕事や家事、育児。
これが何日も続けば、親御さん自身が疲弊してしまいます。
ですから、
「子どもの治療」だけではなく「家族の睡眠を守る」
という視点も重要です。
夫婦や家族で対応を分担する。
夜驚症が起こった時間を記録して、パターンを把握する。
毎晩付き添い続けるのではなく、安全対策をしたうえで見守る。
必要なら祖父母や家族、地域の支援を頼る。
こうしたことも立派なケアです。
親御さんが限界まで頑張る必要はありません。
◆ 訪問看護やデイケア、療育は必要?
ここも誤解されやすいところです。
夜驚症だけを理由に、訪問看護やデイケア、児童発達支援を利用するというのが一般的な流れではありません。
ただし、夜驚症以外にも、
・発達の偏り
・ASDやADHDなどの発達特性
・知的障害
・医療的ケアが必要
・強い不安や情緒面の問題がある
・日中の生活にも大きな困難がある
・家庭だけでは対応が難しい
などがある場合には、別の支援につながることがあります。
こども家庭庁では、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援など、子どもの発達や生活を支えるさまざまな制度を整備しています。
また、医療的ケアが必要な子どもなどでは、医療・福祉・教育・子育て支援が連携して家族を支える仕組みがあります。 (厚生労働省)
つまり、
「夜驚症だから療育」ではなく、「その子と家族がどんな困りごとを抱えているか」で支援を考える
ということです。
◆ こんな場合は、一度受診しましょう

夜驚症は多くの場合、成長とともに落ち着いていきます。
研究レビューでは、多くの子どもが思春期ごろまでに自然に改善するとされています。 (PubMed)
ただし、次のような場合は、一度小児科や睡眠を専門とする医療機関などに相談してみましょう。
・毎晩のように繰り返す
・長時間続く
・けがをするほど激しく動く
・ベッドから飛び出す、外へ出ようとする
・日中の眠気が強い
・学校生活に影響している
・いびきや呼吸が止まるような症状がある
・けいれんのような動きがある
・年齢が上がっても非常に強い症状が続く
・家族が睡眠不足で限界になっている
特に、夜間の異常な動きが毎回ほぼ同じパターンで繰り返される、
意識がない状態でけいれんするように見える、といった場合には、夜驚症以外の病気との区別が必要です。
小児てんかんは、全身のけいれんだけでなく「ぼーっとする」「意識が変化する」など
さまざまな症状で現れることがあります。 (国立成育医療研究センター)
必要に応じて、脳波検査や睡眠検査などを行うこともあります。
◆ 夜驚症は「怖い病気」ではありません
子どもが夜中に突然叫んだら、親御さんが怖くなるのは当然です。
でも、夜驚症は、
「子どもの脳が発達途中にある中で、睡眠から覚醒への切り替えがうまくいかず、
一時的に“半分起きているような状態”になる」
と考えると分かりやすいでしょう。
まずは、
「ちゃんと眠れているかな?」
「最近、疲れすぎていないかな?」
「生活リズムが乱れていないかな?」
を確認してみてください。
そして、夜驚症が起こったときには、無理に起こそうとせず、安全を確保して静かに見守る。
それでも頻繁に起こる、日中にも影響がある、親御さんが限界になっている…。そんなときは、医療機関に相談して大丈夫です。
子どもの睡眠を守ることは、子どもの心を守ることでもあります。
そして同じくらい、頑張っている親御さん自身の睡眠と心も、大切にしてくださいね。
お子さんのことも、親御さんの困り事も、お気軽にメンタルクリニックにご相談ください。
取材実績(一部抜粋)
【TV】TBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」(『ドパガキ』について)
【WEB】Yahoo!ニュース(
スマホ一律禁止はNG?メンタルクリニックで増加傾向「ドパガキ」相談…専門医 “年齢別の付き合い方”指南「刺激の排除でなく、他の楽しさを失わないこと
)
【WEB】PRESIDENT Online(
カリッと焼いてかじるだけ…9月のメンタル不調者に不足する栄養素がとれる「スーパーにある食材」
)
【監修】大塚商会
「自分の状態を確認する簡単ストレスチェック」
【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』(
【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。
)
【YouTube】『かずのすけ』(
敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ
)
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook
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