「メンタルなのに、なぜ採血?」心の不調と身体の検査の意外な関係
こんにちは、ゆうメンタルクリニック 医師の森です。
「メンタルの診察なのに、どうして採血するんですか?」
患者さんから、ときどきこんな質問をいただきます。
実は、メンタルの不調を診るうえで、採血などの身体の検査はとても大切です。
なぜなら、
「こころの症状=こころだけが原因」とは限らないからです。
「最近、気分が落ち込む」
「何をするにもやる気が出ない」
「疲れやすい」
「イライラする」
「集中できない」
「動悸がする」
こうした症状は、うつ病や不安症などでもみられます。
一方で、甲状腺の異常、糖尿病、貧血、鉄欠乏、栄養不足など、身体の病気や状態でも似た症状が出ることがあります。
「たぶん心の病気だろう」と決めつけずに、心と身体の両方から確認することが大切なのです。
確認したい「甲状腺」
甲状腺は、身体の代謝やエネルギーの使い方などを調整するホルモンを作っています。
代表的な検査が、
・TSH(甲状腺刺激ホルモン)
・FT4(遊離サイロキシン)
・FT3(遊離トリヨードサイロニン)
です。
甲状腺機能が低下すると、
・疲れやすい
・何をするにも億劫
・眠気が強い
・気分が落ち込む
・集中力や記憶力が低下する
・寒がりになる
・体重が増える
などがみられることがあります。
反対に、甲状腺ホルモンが過剰になると、
・動悸
・イライラ
・不安感
・落ち着かない
・眠りにくい
・疲れやすい
・体重が減る
などが出ることがあります。
「急に不安が強くなった」
「動悸がする」
という場合も、必ずしもメンタルの病気とは限りません。
血糖値もチェックします
血糖値やHbA1cを調べることもあります。
糖尿病では、疲労感などの身体症状に加えて、うつ症状との関連も知られています。
また、血糖値が下がりすぎると、
・動悸
・冷や汗
・不安感
・イライラ
・集中できない
・ぼーっとする
などが起こることがあります。
「なんとなく調子が悪い」というとき、血糖の状態を確認することもあります。
CRPで「炎症」がないかを見る
CRPは、身体の中で炎症が起きていないかを見るための代表的な血液検査です。
感染症などでも上昇します。炎症があると、発熱や痛みだけではなく、
・だるい
・疲れやすい
・食欲が落ちる
・集中しにくい
などの全身症状が出ることがあります。
また、慢性的な炎症とうつ症状などの関連についても研究されています。
ただし、
「CRPが高い=メンタル不調の原因」
ということではありません。
CRPはあくまで、「身体のどこかで炎症が起きていないか」を確認するための手がかりです。
栄養不足も見逃せません
脳も、身体の一部です。
当然、脳が働くためにも栄養が必要です。
特に確認することがあるのが、鉄、フェリチン、亜鉛、ビタミンD、葉酸などです。
鉄・フェリチン
鉄が不足すると、
・疲れやすい
・だるい
・集中できない
・イライラする
・気分が落ち込む
などがみられることがあります。
ここでポイントになるのがフェリチン。
フェリチンは、身体に蓄えられている鉄の量を考えるときの参考になる検査です。
ヘモグロビンが正常でも、鉄の貯蔵量が少ないことがあります。
ただし、フェリチンは炎症などでも変動するため、数値だけで判断するものではありません。
亜鉛
亜鉛は、味覚だけでなく、さまざまな酵素や神経機能に関係しています。
不足すると、
・味が分かりにくい
・食欲が落ちる
・疲れやすい
などがみられることがあります。
亜鉛とうつ症状との関連も研究されていますが、「亜鉛を補えば必ずメンタル不調が改善する」という意味ではありません。
ビタミンD
ビタミンDは骨だけの問題ではありません。
脳にもビタミンD受容体があり、脳機能との関連が研究されています。
ビタミンDが低い人とうつ症状との関連も報告されていますが、低値だからといって、それだけでうつ病の原因と判断することはできません。
葉酸
葉酸は、赤血球を作るためにも必要な栄養素です。
不足すると貧血につながることがあります。
さらに、
・疲れやすい
・集中しにくい
・気分が落ち込む
・認知機能に影響する
などの症状がみられることがあります。
そして「薬を安全に使うため」の採血もあります
採血には、病気の原因を探す以外にも、大切な役割があります。
それが、
「薬を安全に使える身体の状態か確認すること」
です。
たとえば肝機能。
AST、ALT、γ-GTPなどを確認します。
肝臓は薬の代謝に関わる重要な臓器です。
薬を使っている途中で肝機能の数値が変化することもあるため、必要に応じて定期的に確認します。
そして腎機能。
クレアチニンやeGFRなどを確認します。
腎臓は、薬やその代謝物を身体の外へ排泄するうえで重要です。
腎機能が低下している場合には、薬の種類や量などを考慮する必要があります。
つまり採血は、
「病気を探すため」だけではなく、「薬を安全に使い続けるため」
にも行うのです。
「漢方なら副作用は少ない」は誤解です
ここも、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
「漢方は自然のものだから、副作用はほとんどないですよね?」
と聞かれることがあります。
でも、
漢方薬も薬です。
副作用が起こることがあります。
たとえば漢方薬に含まれることのある「甘草」では、偽アルドステロン症と呼ばれる副作用が起こることがあります。
血圧が上がったり、むくみが出たり、血液中のカリウムが低下したりすることがあります。
また、漢方薬でも肝機能障害などが起こることがあります。
「漢方だから大丈夫」と自己判断して、複数の漢方薬を重ねて飲むのも注意が必要です。
漢方薬だから採血はいらない、ということでもありません。
もちろん、すべての人に同じ頻度で検査が必要なわけではありません。
症状、年齢、持病、服用している薬、使用する薬の種類などによって、必要な検査は変わります。
「メンタルかな?」と思ったときこそ、身体も見る
ここが、今回一番お伝えしたいことです。
「最近、元気が出ない」
「眠れない」
「不安になる」
「イライラする」
「疲れて仕方がない」
そんなとき、
「自分はメンタルが弱いのかな」
と、自分を責めなくて大丈夫です。
甲状腺かもしれない。
血糖かもしれない。
貧血かもしれない。
鉄が足りないのかもしれない。
炎症があるのかもしれない。
あるいは、身体には大きな異常がなく、ストレスや睡眠不足などが影響しているのかもしれません。
だからこそ、心と身体の両方を見る。
採血は、そのための大切な手がかりの一つです。
「メンタルだから採血する」のではなく、 「メンタルの症状を、身体も含めてきちんと見るために採血する」ということです。
取材実績(一部抜粋)
【TV】TBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」(『ドパガキ』について)
【WEB】Yahoo!ニュース(
スマホ一律禁止はNG?メンタルクリニックで増加傾向「ドパガキ」相談…専門医 “年齢別の付き合い方”指南「刺激の排除でなく、他の楽しさを失わないこと
)
【WEB】PRESIDENT Online(
カリッと焼いてかじるだけ…9月のメンタル不調者に不足する栄養素がとれる「スーパーにある食材」
)
【監修】大塚商会
「自分の状態を確認する簡単ストレスチェック」
【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』(
【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。
)
【YouTube】『かずのすけ』(
敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ
)
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook
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