「作家は、ほめられたい生き物?」〜心療内科コラム

「作家は、ほめられたい生き物?」精神科医から3つの分析〜心療内科コラム

こんにちは。ゆうきゆうです。

最近、ネットを見ていたら、こんな書き込みがありました。

「すべての作家は、読者が思っている百倍は、ほめられたい生き物です。」

そして「だから作家にエネルギーをあげるために、もっとほめてあげてください」というような内容でした。

こちら、ものすごくたくさんの支持を受けていました。

まぁ、確かに納得できる意見ではあります。
自分も、ほめられたいか、ほめられたくないか、と言われれば、もちろん「ほめられたい」と思いますし。

しかし。
正直、ほめられることを、こう書いてまで求めるのはどうなんだろう、と。
これはウラを返せば「ほめられないと、書く気が湧かない」ということにもなります。

これはこれで、どうなのでしょうか。

◆ ほめ言葉とプロであること

僕は思います。
もしプロになりたいのなら、それこそ「ほめられようがほめられまいが、たとえ世界から何の反応がなくても、とにかく作り続けたいと思う欲求」こそが重要だと。

たとえば、ピカソが「私はほめられないと絵を描く気力が湧かない」と言うとは思えませんし、ベートーベンが「ほめてくれないと音楽を作れない」なんて言うとも思えません。

それこそ「ほめ」を求めるなら「ほめてもらえるまで作り続けてやる!」と思うか、または「ほめられようがほめられまいが、自分は作り続けるんだ」と思うことこそが天才の証であり、我々が目指すべき場所はそこなのではないでしょうか。

さらに言うなら、読者に「ほめること」を求めるのは、
「お母さんがほめてくれないと勉強しないよ!」
と言うのに近いのではないかと思うのです。

◆ ほめ言葉は実は危険?

実際に心理学的にも、面白い実験結果があります。

子供にたいして、
A「成績が良かったね、あなたは頭がいいね」など、才能や結果をほめる
B「よく頑張ったね、よく努力したね」など、行動や努力をほめる
とした場合。

Bはその後もどんどんやる気が増したのにたいして、Aはやる気が失われていきました。
才能をほめられることで、その高まったプライドが折れることを恐れて、そこまで行動的ではなくなったのです。逆にBは、行動をほめられることで「もっと行動しよう」と思えるようになったのですね。

ここで作家が「読者にほめられたい」と思う場合、想定されるほめ言葉は
「面白かった」とか「素晴らしい作品だ」とかの内容のはずです。
「頑張って書きましたね」みたいなほめ言葉はマレです。(というかそれ、作品は大したことがない、みたいな意味にも取れちゃいますし)
そしてこの「面白かった」とかは、「作品=結果」をほめることでもあるので、実は先ほどで言えばAこと「やる気が減ってしまうリスクがある、ほめ言葉」でもあるのです。

すなわち、ほめ言葉は確かに嬉しいものですが、時にやる気を減らしてしまう可能性もあるもので、ましてや「もっとほめて! 作家は、ほめ言葉がないとやる気が減るよ!」と話すというのは、すでにそのワナにハマった状況ということになるわけです。

プロになり、それを続けて行くために重要なのは、ほめ言葉という外部のものを強く求め過ぎるのではなく、
「ほめられようがほめられまいが、俺の作りたかったものはコレなんだ!」
「何と言われようが、自分自身がこの作品を作ることで楽しんだ!」
「何より、私が読みたかったものはこの内容で、それを作ったんだ!」
という気持ちなのではないか、と思います。

というわけで、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。

ちなみに自分は
「ゆうきゆうにしては分かりやすい」
「ゆうきゆうにしては納得できた」
「ゆうきゆうなのに感動した」
というご感想をいただくことがあり、これはこれで喜んでいいのか泣いていいのか分かりません。ほめ言葉でいいの…ですよね…?

切なく思いつつも、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

「作家は、ほめられたい生き物?」〜心療内科コラム

単行本はこちらから!

新ヒロイン2名も登場!
果たしてどんな二人なのか!(表紙にいますけども)

お気軽にご覧いただければ幸いです!

「マンガで分かる心療内科」、WEB版のバックナンバーはこちらです。↓

「作家は、ほめられたい生き物?」〜心療内科コラム

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

ゆうメンタルクリニックは、診察を『24時間・365日』受け付けております!
どんなお悩みも、お気軽にご相談ください。


診察を申し込む

こちらのお申し込みはご希望のお時間を確約するものではありません。
混雑具合によってはお時間ずれ込む可能性もありますので、余裕をもってお越し下さい。

関東エリア

関西エリア

オンラインカウンセリング【iカウンセラー】お近くにメンタルクリニックがなくても、自宅から安心してカウンセリング!深夜2時まで受けられる!あなたの「つらい」を経験豊富なカウンセラーがしっかりケア
監修・制作

このページは、ゆうメンタルクリニックの医師・スタッフが監修・制作しております。

特別監修・ゆうきゆう
精神科医、心理学者。
東京大学医学部医学科を卒業後、うつ病・統合失調症・てんかん・パニック障害・社交不安障害・不眠症など多くの疾患の治療を行い、2008年よりゆうメンタルクリニックを開院。
『マンガで分かる心療内科』の他、100冊以上の著作があります。

ゆうきゆうプロフィール

運営
取材依頼専用フォーム」よりご連絡ください。
連絡先専用フォーム」よりご連絡ください。