写真を撮影してばかりいると感動を逃す!~女医が教える心理学

写真を撮影してばかりいると感動を逃す!~女医が教える心理学

 

みなさんは写真撮影が好きでしょうか?嫌いでしょうか?

えぇ。分かってます。
たいていの人が「大好き」なはずです。

実際に観光地にいっても、たいていの人が、ひたすら写真を撮影しています。
レストランやバー、カフェなどでも、何かの注文が来るたびに、まず撮影しています。

まるで撮影こそがこの世の中で一番大切な儀式のようです。

これ、大半がSNSでアップしたり、誰かに送る目的だと思います。

でも実際、そこに問題はないのでしょうか。

実はそれにたいして、重要な実験があります。

 

リンダ・ヘンケルという心理学者は、美術館で

A写真を撮影しながら絵を鑑賞するグループ
B写真を撮影せずに絵を鑑賞するグループ
 

を対象にして、どれだけ作品のことを覚えているかテストしました。

すると「A撮影していたグループ」の正答率は55%。
しかし「B撮影しなかったグループ」は、正答率が64%でした。

すなわち撮影してばかりいると、記憶に残らなくなってしまうのです。

 

実際、脳はあまりに多くのタスクをこなすことが苦手と言われています。いわゆる「マルチタスク」です。

ここで撮影しながらだと、脳の容量は、ほとんど撮影に費やされます。
「うまく写せているか」
「構図は大丈夫か」
「自分も写っているか」
「どの撮り方だとバズりそうか」
なんてことまで考えているかもしれません。

実際に「カメラマン」という仕事もあるわけですから、撮影はそれだけの労力が必要な、大変なことなのだと思います。
素人が撮影したとしても、一定の思考や労力は必要なのではないでしょうか。

よって撮影ナシで観ていたグループの方が、より明確に記憶していたと考えられるわけですね。

そしてこちら、記憶に残りづらいということは、そのときの感情の動きも強くない可能性もあります。
当然ですが、強烈に感情が動くできごとであれば、記憶にも強く残ります。
逆に感情があまり動かないできごとだと、記憶にも残りにくくなります。

すなわち撮影しつつ観ていた人たちは、記憶にそこまで残っていない、すなわち観ているときに、そこまで感情の動きも大きくなかったのではないか、とも考えられるわけです。

これは美術館に限りません。
色々な景色や食事などふくめて、「まずは撮影が最優先」という人は、記憶も感情も動きづらい可能性もあるのです。

写真を撮影してばかりいると感動を逃す!~女医が教える心理学

もちろんですが、撮影を否定するわけではありません。「あとあとまで楽しみたい」という気持ちも当然分かります。
ただ撮影をした場合も、撮影だけしたらもうOK、ではなく、「さぁ撮影した、このあとは自分の目でゆっくり楽しもう」ということを明確に認識するべきだと思うのです。

何か少しでも参考になることがあれば幸いです。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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特別監修・ゆうきゆう
精神科医、心理学者。
東京大学医学部医学科を卒業後、うつ病・統合失調症・てんかん・パニック障害・社交不安障害・不眠症など多くの疾患の治療を行い、2008年よりゆうメンタルクリニックを開院。
『マンガで分かる心療内科』の他、100冊以上の著作があります。

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