精神科医に聞く・どうする?コロナ離婚・コロナDV・コロナ依存
現在コロナウイルスの蔓延によって、在宅勤務されている方も多いかと思います。
一日中家にいられるから楽などと思えたのは最初だけ。
狭い家の中で家族と一日中一緒に過ごすのは、実はかなりのストレスになるのです。
この状況下で起こりうる様々な精神的危機と心的負担を軽減する方法を、ゆうメンタルクリニック理事長・精神科医のゆうきゆう先生がお教えします!
コロナ禍の外出自粛下で起こりうる危機
① コロナ離婚(コロナで在宅→夫婦間不和)
人間関係を友好に保つには「適切な距離感」が重要です。
「ヤマアラシのジレンマ」というたとえがあります。
ヤマアラシとはハリネズミのこと。2匹のハリネズミ同士がちょうどいい距離を保てれば、寒さから身をしのぐことができます。しかし、近づきすぎると体の針で互いを傷つけ合ってしまいます。
人間同士もこれと同じです。
近すぎず離れすぎず、ちょうどよい距離感が良い関係を保つのです。
しかし現在、テレワークなどで一日中配偶者と一緒にいることも多いのではないでしょうか。
するとまるでヤマアラシが体の針で傷つけ合うように、衝突が増えてしまうのです。最悪の結果、離婚にもつながりかねません。
コロナ離婚にならないために
コロナ離婚にならないために
このような場合の対処法としては、とにかく少しでも「離れること」です。
それぞれの部屋で作業して最低限のかかわりにする、テリトリーを分ける、公園などに散歩に出るなどして、なるべくプライベートを確保することです。
② コロナDV(コロナで在宅 → DV 増加)
在宅勤務で家にこもりがちになると「ヤマアラシのジレンマ」によって家族同士の衝突が生じ、人によっては相手に暴力をふるってしまうこともあります。
あまりにひどい場合は、ためらわずに警察など公的機関に頼るべきです。
コミュニケーションは「I(アイ)メッセージ」で
最悪の状況に至る前にできることは、適度な距離を置くことに加えて「適切なコミュニケーション」をとることです。
ところで、もしあなたが相手にしてほしいことがあったとき、何と言いますか?
「あなたはどうして○○してくれないの?」「あなたが○○じゃない!!」はNG。
それよりも「私は○○してくれたらとてもうれしい」「私は○○と思ってるの」というように、相手が主語(youメッセージ)なのではなく、自分を主語(Iメッセージ)にして思いを伝えてみましょう。相手への「要求」ではなく自分の「思い」として伝えると、無駄な軋轢を避けることができます。
③ コロナ依存
一日中家にいると、ついついお酒を飲み続けてしまったり、ネットサーフィンやゲームをだらだらと続けてしまったりしませんか?
「ちょっとだけならいいだろう」「まだまだ自分は大丈夫」などと安易に考えて行為を続けていると、気づかないうちに重度の依存症となってしまいます。
依存物を「置かない」
依存行為に歯止めをかけるためにはまず、お酒やたばこなどを「買わない」ことです。
飲みたいという欲求が生じてから我慢するのは至難の業。まだ理性が働くときにお酒を買わない、パソコンのプラグを抜くなど、依存対象から物理的な距離をとるようにしてください。
依存しなかったことに注目を
「依存しなかった回数をメモする」のも効果的です。
これには以下のような調査結果があります。
喫煙者を2つのグループに分け、一方には「喫煙した回数を記録」するように、もう一方には「喫煙しないですんだ回数を記録」するよう指示しました。
すると「喫煙しないですんだ回数を記録」したグループは喫煙回数が大幅に減少したのです。それに反して「喫煙した回数を記録」したグループは喫煙回数が増えてしまいました。
つまり「お酒を飲んでしまった」「ゲームし続けてしまった」と依存してしまったことに落ち込むよりも、
「今夜は飲まないですんだ」「日中はゲームしなかった」
など、依存しなかったことに目を向けることが、依存から抜け出すためには有効なのです。
今、心身の健康を保つためには
人にとって、習慣的に外出することは健康維持に大変重要です。
しかしそれができない今、だらだらと生活していては心身ともにダメージを受けることになります。
規則正しい生活を維持することで心の落ち込みも防げます。それに加えて運動もできればベストなのですが、外出が難しければ家の中でのストレッチでもかまいません。
明るい明日をイメージして
今回のような状況も、永遠に続くわけではありません。いつか必ず収束します。
在宅期間の現在を、明るい未来に向けての準備期間と前向きにとらえてみてもいいかもしれません。
ゆうメンタルクリニック理事長・精神科医。東大医学部卒。
「マンガで分かる心療内科」原作者。