友人と体を入れ替える実験!? うつ病治療に応用できる可能性も…
体が入れ替わってしまう、というテーマの映画や小説はたくさんありますよね。
スウェーデンカロリンスカ研究所の脳神経科学者、パヴェル・タシコフスキー氏ら研究チームは、実際に体が入れ替わったと「錯覚させる」実験を行なって、人にどんな影響を与えるか調査しました(以下※1)。
ここで気をつけてほしいのは、本当に入れ替わってしまったのではないということ。
「入れ替わった」というのはあくまで錯覚です。
『iScience』に掲載された実験結果では、「入れ替わった」という錯覚が自己評価や記憶力に大きな影響を与えることが分かり、精神疾患治療に応用できる可能性も示唆されています。
「入れ替わった!」と錯覚させる実験とは
友人同士が2人一組になり、片方の視覚や触覚をもう一方が得られるようにします。
ゴーグルを装着し、友人視点のライブ映像を見せられます。
視覚と触覚が一致するよう、同じタイミングで同じ部位に刺激を与えられます。
結果、入れ替わったという錯覚を持たせる実験は見事、成功しました。
友人が自分の足の指を動かしているのを見て、まるで自分の指が勝手に動いているかのように感じ
「やめて!」と叫んだ被験者もいるほどです。
入れ替わりの錯覚は自己評価に影響するのか
入れ替わり実験の後、各参加者に性格を自己評価させたところ、ペアになった友人の性格に似ていると評価する傾向がありました。
また、友人の体を自分のものとして受け入れられる人の方が記憶力テストの成績が良く、反対に受け入れられない人は成績が悪いという結果も出ました。
自己認識は何によって確立するのか
ある仮定では「自己は過去の記憶や社会的関係によって決定される」とされています。
しかし今回の実験によれば、記憶や社会的関係だけでなく、身体こそが心理的感覚の継続的構築に大きな影響を与えていると考えられます。
今回の実験は、離人症やうつ病の自己否定感へのより深い考察にも貢献するものとなりました。
ネット上での意見
「友人と入れ替わった!と思うだけで、性格や記憶が変わってしまうなんて…なんだか自分が信じられなくなります」
「入れ替わりの映画とかでも、自己矛盾を受け入れていく過程がよく描かれているけど、別に入れ替わらなくてもみんな常に自己矛盾を抱え、それを受け入れる作業を日々くりかえしているんですかね」
生後半月ほどの赤ちゃんは、鏡を見ても自分だとは思わず、友達に呼びかけるように笑ったり、手を伸ばしたりします。
それが1歳近くになると、これは自分だと気づいているのが分かります。
私たちは自分が自分であると、一体いつから当然のように受け入れ始めたのでしょうか。
まとめ
自分が自分であることをいかに認識するか?
人間の原点を問う命題ですが、今回の興味深い実験で自己認識の確立過程についての研究が一歩前進するのは間違いないでしょう。
参考サイト
※1 https://nazology.net/archives/67514
監修 ゆうメンタル・スキンクリニックグループ 医師
制作 ゆうメンタル・スキンクリニック・ニュースメディア事業部