不安障害

不安障害

過度な不安や恐怖が持続的に現れ、日常生活に支障をきたす精神的な障害です。
ここでは不安障害の症状や原因、そして治療法について解説します。

不安障害とは

不安障害とは、いつも心配ごとが頭から離れず、落ち着かない状態が続く病気のことです。この強い不安感が長く続くと、普通の生活に支障が出てきてしまい、身体も落ち着きがなくなり、動悸やめまい、発汗などの身体症状が出ます。

最近の調査では、不安障害の一生涯有病率は約16%と言われており、決して珍しい病気ではありません。男女比では女性の方が多く、20代から40代の現役世代に多い傾向があります。

不安障害には、いくつかの種類があります。代表的なものは、パニック発作を起こす「パニック障害」、何でも過剰に心配してしまう「全般性不安障害」、人付き合いが苦手な「社交不安障害」などです。

パニック障害では、突然動悸や息切れ、めまいなどの身体症状が現れ、「死ぬのではないか」と恐怖を感じる発作が起きます。全般性不安障害は、仕事や健康、家族のことなど、様々なことを過剰に心配する状態が続きます。社交不安障害は、人と交わるとき強い緊張を感じ、人付き合いを極度に恐れる病気です。

不安障害の特徴

不安障害の特徴は、以下のようなことがあげられます。

・小さなことでも常に心配してしまい、不安が大きくなる
例えば、通勤電車で少し遅れただけで「遅刻して職場で怒られるかもしれない」と過剰に心配してしまう、子どもが少し熱を出しただけでも「重い病気かもしれない」と過剰反応してしまうなどです。

・「最悪のことが起きるのではないか」と受け止めすぎる
日常の些細なことでも、常に最悪のシナリオを想像してしまいます。誤りを指摘されれば「能力不足と見なされるかも」と考え、落ち込みます。先に決められた大切な行事ごとなどがあれば「うまくいかないかもしれない」と過度に不安になります。

・不安な気持ちがなかなか収まらず、長く継続する
一度不安が高まると、そのネガティブな考えから抜け出せず、気持ちが休まることがありません。夜も「明日うまく仕事が運べるか」「家族に何か悪いことがあるんじゃないか」など、次から次へと心配ごとが浮かび上がり、眠れないほど強い不安に見舞われます。

・不安を感じると、動悸や発汗、めまいなどの身体的変調が起こる
不安が高まると、動悸、呼吸困難、手足の震え、発汗、頭痛など、自律神経の乱れから様々な身体症状が現れます。時には、これらの症状が一気に強くなり、発作的な強いパニック発作となることもあります。

・家族や周りの人に、不安の気持ちが分かってもらえない
常に強い不安におびえている自分の気持ちが、家族や周りの人から理解されにくいものです。「根拠のない心配ばかりしている」と言われてしまい、さらに不安が高まってしまうことも。

・不安が強すぎて、普通の生活に大きな影響が出る
日常の些細なことから過剰な不安を抱き、不安のために仕事や人付き合いに支障が出るなど、普通の生活に大きな影響が出てしまいます。社交不安障害の人は人と会うことを避け、家にこもりがちになります。

このように、不安障害では常に強い不安におびえており、その不安が日常生活に深刻な支障をきたします。しかし、患者自身や周りからはその症状が理解されにくく、一人で抱え込んでしまいがちです。そのため、専門家による適切な治療・支援が必要不可欠な病気なのです。

不安障害の診断基準

不安障害か否かは、以下の基準で精神科医や心療内科医が総合的に判断して診断します。

・6ヶ月以上にわたり、過剰で制御不能な不安や心配が継続している
例えば、些細な出来事でも「最悪のことになるかもしれない」と過剰に心配し、そのネガティブな考えから抜け出せずに半年以上が経過している場合など。

・その不安のために、普段の家庭生活や社会生活、仕事などに障害が出ている
不安が強すぎて、家事や育児がおろそかになったり、会社で職務を十分に果たせなかったり、人付き合いを控えるようになった場合など。

・症状が身体的な病気や薬物の影響ではなく、心理的な不安が原因である
検査で身体に異常がなく、薬物の副作用でもないことを確認します。その後、不安を引き起こす心因性の問題であると判断される場合。

医師は、まず問診で患者の症状の有無、程度、期間などを詳しく聞き取ります。日常生活や対人関係、職場での具体的な支障について確認します。必要に応じて、血液検査や画像検査なども行い、身体的な原因がないことを確かめます。

そして上記の3つの診断基準に当てはまれば、不安障害と判定されるわけです。さらに症状から、パニック障害、全般性不安障害、社交不安障害などの種類も見極められます。

つまり、長期にわたる過剰で制御不能な不安が、生活に支障をきたしていることが大前提となります。医師は様々な観点から総合的に判断を下すのが一般的です。

不安障害の症状

不安障害

不安の症状

不安障害の代表的な症状は、つきまとう過剰な心配や不安です。些細なことでも「最悪のことにならないか」と過剰に不安になり、悲観的で否定的な考えを振り払えなくなります。そのため、日常生活に大きな支障が出る状態になります。

次から次へと心配ごとが浮かび、眠れないほど強い不安に見舞われます。一度不安が高まると、そのネガティブな考えの渦に呑み込まれ、気持ちが落ち着かなくなります。些細な日常の出来事さえも、脅威と受け取り、危険を過剰に予期してしまう状態に陥ります。

身体的な症状

不安が高まると、自律神経の乱れから身体にさまざまな変調が現れます。動悸、呼吸困難、めまい、手足の震え、発汗、頭痛、筋肉の緊張など、多彩な身体症状が表れます。

例えば、買い物に行ったついでに電車に乗ろうとした時、突然激しい動悸と呼吸困難に見舞われ、「窓際の席がなければ閉所恐怖症発作で死んでしまうのではないか」と強い不安に駆られることがあります。また、会社の会議中に急に手に冷や汗が滲み、「落ち着きがなく馬鹿にされるのではないか」と強い緊張と不安を覚えることもあるでしょう。

このように身体から異常な反応が起これば、さらに不安が増幅される悪循環に陥ります。中には、動悸、呼吸困難、めまいなどの身体症状が極端に激しくなり、発作的な強烈なパニック発作が起こる場合もあります。この時には、「命に別状はないか」と死の恐怖に怯えてしまうのです。不安障害では、このように日常生活の中で繰り返し過剰な不安や身体症状に見舞われるのが特徴的です。

行動の制限

不安障害のある人は、無意識のうちに不安を避けるための行動制限をしがちです。

社交不安障害の人は、人付き合いの機会を極力避けるようになります。職場の飲み会や友人の結婚式など、人が多く集まる場所に出かけるのを渋るようになります。親しい家族と会う時でさえ、緊張してしまい「上手く会話ができないかも…」と不安になり、なるべく外出を控えがちです。結果的に、家に閉じこもりがちの生活になってしまいます。

パニック障害の人は、発作の引き金となりそうな場所や状況を徐々に避けるようになり、行動範囲が狭くなっていきます。満員電車に乗ると動悸や息切れを起こすため、徐々に電車に乗れなくなってしまいます。人混みの中でパニック発作が起きるのではと恐れ、デパートや映画館、コンサートなどの人混みも避けるようになるでしょう。

このように、不安を避けようとする行動制限が広がれば広がるほど、社会生活が困難になり、ひいては仕事や人間関係にも支障をきたし、生活の質が大きく損なわれてしまうのです。

不安障害の原因

不安障害

脳内の異常

不安障害の原因の一つとして、脳内の神経伝達物質の異常があげられています。

セロトニンやGABA(ガンマアミノ酪酸)などの神経伝達物質は、不安を抑える働きがあります。しかし不安障害の人はこれらの物質のバランスが崩れており、不安がコントロールできなくなっていると考えられています。この神経伝達物質の異常には、遺伝的な要因も関係していると言われています。

また、扁桃体という脳の一部の機能異常も指摘されています。扁桃体は通常、危険を知らせる役割があります。しかし不安障害の人の扁桃体は、危険がなくても過剰に反応してしまい、不安を高めてしまうのです。つまり、「危険」を過剰に感じ取ってしまうわけです。

このように、脳内の神経伝達物質の異常や、扁桃体の機能異常が、不安障害の発症に深く関係していると考えられているのです。

幼少期の環境

幼少期の辛い環境体験も、不安障害を発症するリスクを高めてしまいます。

特に、親から身体的・精神的な虐待を受けていた場合や、ネグレクト(育児放棄)で適切な世話を受けられなかった場合は、不安障害になりやすいと言われています。また、両親が過剰に心配することを良しとする言動をしていた家庭環境も、子どもに不安を植え付けてしまう可能性があります。

さらに、幼い頃に交通事故や災害、犯罪被害など、大きな精神的ストレス体験があった場合も要注意です。このような心的外傷(トラウマ)を受けた子どもは、その後不安障害を発症するリスクが高まります。

つまり、幼少期に受けた虐待やネグレクト、過剰な心配、トラウマなどの環境が、脳の発達過程に影響を与え、不安障害になりやすくなってしまうということです。

思考のパターン

物事を極端に捉えがちな認知のゆがみも、不安障害の原因の一つとされています。いつも「最悪の事態を想像してしまう」「些細なことを過剰に不安視する」という否定的で極端な考え方をしがちです。

また、完璧主義的で自分に厳しすぎる人や、常に自分を責め立てるタイプの人にも、不安障害になりやすい傾向があります。「失敗は許されない」「何をやっても上手くいかない」と、ネガティブな自己評価をしがちなのです。

このような極端で偏った認知のパターンが、不安をあおり、症状を悪化させていきます。認知の癖を改善することが、不安障害の改善につながるのです。

不安障害の治療法

不安障害

認知行動療法

不安障害の代表的な治療法は、認知行動療法です。この療法は、不安をあおる考え方や行動のパターンを少しずつ改めていくことで、不安を和らげていく方法です。

具体的には、過剰に心配することをやめる認知再構成の訓練や、避けていた場所や状況に徐々に適応していく曝露療法(薬物療法でパニック発作が落ち着いたらそれまで避けていた状況や場所にあえて少しずつトライする治療)などを行います。また、リラクゼーション法なども組み合わせて、徐々に不安への対処能力を高めていきます。

認知行動療法は、精神療法の中で最も科学的根拠のある治療法の一つとされています。約60~80%の人に有効だと報告されており、どの種類の不安障害にも効果があります。

薬物療法

不安障害の治療法として、薬を使う薬物療法もよく用いられます。抗不安薬や抗うつ薬が処方されることが多いです。

これらの薬は、脳内の不安を抑える物質のバランスを整え、不安症状を和らげる働きがあります。具体的には、セロトニンやGABAなどの神経伝達物質の分泌を調節する作用があります。

薬物療法は速効性があり、発作的な強い不安をしずめるのに有効です。しかし、薬に頼りすぎると不安に立ち向かう力が身に付かないため、認知行動療法と併用するのが一般的です。

不安障害の予防法

不安障害

全人的医療アプローチ

最近では、心と体の両面から、さらには人間関係や生活習慣なども見直す「全人的医療アプローチ」が注目されています。不安障害は生活全般に影響を及ぼすため、幅広い視点からのアプローチが有効だと考えられています。

具体的には、薬物療法と認知行動療法に加え、運動療法や食事療法、メディテーション(精神を集中させる訓練)などを組み合わせて行います。また、カウンセリングで対人関係の改善を図ったり、ストレス要因となる生活習慣の見直しを行ったりもします。

つまり、心身両面から総合的にアプローチすることで、より良い効果が期待できるのです。

ただし、実施できる医療機関が限られている点が課題です。

ストレス対策

不安障害を予防したり、症状を和らげたりするには、日頃からストレス対策を意識的に行うことが重要です。ストレスが溜まり過ぎると、そのストレスが引き金となって不安が高まりやすくなります

その、ストレス解消の有効な方法の一つが運動です。軽めの散歩や体操でも効果はあります。ただし、呼吸が乱れて汗をかく程度の運動が理想です。例えば、30分程度のジョギングや筋トレ、エアロビクスなどがおすすめです。運動中は気分転換になり、終了後には爽快感や達成感が得られるでしょう。

また、呼吸法や自律訓練法なども簡単にできるリフレッシュの機会として役立ちます。どこでもできる腹式呼吸を意識することで、リラックス効果が期待できます。自宅でも仕事中でも、ストレス解消の一手段になるでしょう。

ストレス発散のためには、趣味活動に熱中することも効果的です。読書や絵画、園芸、手芸など、自分の好きなことに没頭できると、幸せホルモンが分泌されて気分が落ち着きます。また、好きな音楽を聴いたり映画を観たりすることで、気分転換を図れます。

さらに、旅行に出かけるなど、生活環境を変えることも重要です。日常とは違う新鮮な環境に身を置くことで、気持ちをリフレッシュでき、ストレスが解消されやすくなります。少しでも気分転換を図ることが大切です。

思考の改善

不安障害を予防したり改善したりするには、否定的で極端な考え方の癖を直していく必要があります。「最悪の事態ばかり想像しない」「些細なことを過剰に心配しない」など、冷静な物事の捉え方を意識しましょう。

例えば、「資料の誤りを指摘されたから、能力が足りないと思われたかもしれない」と否定的に考えるのではなく、「間違いは誰にでもあるし、次は気をつけよう」と前向きに捉えられるよう心がける。このような肯定的な認知の仕方が大切です。

また、過剰な完璧主義にとらわれすぎないことも重要です。「自分にも欠点や未熟な部分はあるし、それでいい」と自分を許せるようになりましょう。過去の失敗にとらわれず、「間違いも成長の一部だ」と前向きに捉え直すことも大切です。

さらに、ポジティブな自己対話を心がけることも効果的です。「うまくいかないことがあっても自分を責めない」「焦らずに、できることからコツコツと取り組む」など、自分自身を励ましながら、前向きに物事に取り組む姿勢を養いましょう。

このように、ネガティブで極端な考え方を改善することは、不安障害の予防や再発防止に大きく役立ちます。認知の偏りを少しずつでも改善していけば、不安への対処力は確実に高まるはずです。

出典:
不安障害(パニック障害、全般性不安障害、社会不安障害、さまざまな恐怖症) | 綱島こころクリニック
https://cocoro.clinic/%e4%b8%8d%e5%ae%89%e9%9a%9c%e5%ae%b3%ef%bc%88%e3%83%91%e3%83%8b%e3%83%83%e3%82%af%e9%9a%9c%e5%ae%b3%e3%80%81%e5%85%a8%e8%88%ac%e6%80%a7%e4%b8%8d%e5%ae%89%e9%9a%9c%e5%ae%b3%e3%80%81%e3%81%95%e3%81%be

不安神経症・強迫性障害とは?(症状・治療法)|心療内科 ひだまりこころクリニック(不安障害)
https://hidamarikokoro.jp/speciality/fuanshogai/

不安障害・パニック障害 | 鈴鹿の心療内科・精神科 すずかこころのクリニック
https://suzukakokoro.jp/medicalcontent/anxietydisorder/

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