依存症
依存症は「否認の病」とも言われます。
自分はいつでもやめられるから大丈夫と思い「依存していると認めない」ことからそう呼ばれます。
しかし依存はそんなに甘いものではありません。大丈夫と思っている間に体はどんどん蝕まれていきます。
依存症の症状や原因、そして治療法や予防法についてご紹介します。
依存症とは:やめたくてもやめられない状態
依存症とは、アルコールや薬物、ギャンブルなど特定の物質や行動に対して、やめたいと思っても自分の意志だけではやめることができない状態を指します。依存する対象は人それぞれ異なりますが、共通しているのは、その行為をやめられないことによって生じる心理的、身体的、社会的な苦痛や問題です。
依存症の二大分類:物質依存とプロセス依存
依存症は大きく二つに分類されます。「物質依存」はアルコール、タバコ、薬物などの具体的な物質に対する依存症です。一方で、「プロセス依存」とは、ギャンブル、インターネット、ゲームなど、特定の行為に依存する状態を指します。
どちらのタイプの依存症も、本人にとって深刻な問題を引き起こし、治療が必要な病気として扱われます。
依存症の社会的影響:家庭や職場への波及
依存症は、本人だけでなく、家族や友人、職場など周囲の人々にも大きな影響を与えます。家庭内での暴言や暴力、経済的な問題、職場での業務への影響など、依存症が原因で様々な社会的問題が発生することがあるのです。
これらの問題は、依存症を抱える本人だけでなく、その周囲の人々にも精神的な負担をかけ、時には家庭や社会生活が崩壊することもあります。
依存症の自己診断:いつ専門家を訪ねるべきか
依存症の自己診断は、自分の行動や感情における変化を客観的に観察することから始まります。例えば、タバコを吸ってないとイライラすることやギャンブルなしでは日常生活が送れない。またはそれらを止めようとした際に強い不安や身体的な反応が現れる場合、専門家に相談するべきサインかもしれません。
さらに、依存行動によって仕事や学業、家庭生活に悪影響が出ている場合や、周囲の人々との人間関係が悪化している場合も、病院やクリニックの受診をしたほうがいいでしょう。
依存症の症状
精神的依存:心が求め続けどうしてもやめられない
精神的依存は、依存対象に対して心が求め続けてしまう状態のことを示します。この状態は、一時的な満足感を得るために、不安やストレスからの逃避、感情の安定化を求める心理状態に基づいています。
例えば、日々の悩みからの一時的な解放感を求めて、アルコールや薬物、ギャンブル等への依存が深まることがあります。このような精神的依存は、依存対象がないと落ち着かない、集中できないという状態に陥ります。
身体的依存:離脱症状の発生
身体的依存は、依存している物質を摂取しないと生じる身体的な反応、いわゆる離脱症状を伴います。アルコールや薬物の使用をやめた際に見られる、手の震え、発汗、不安感の増大、不眠などが代表的です。
これらの症状は、身体が依存物質なしで機能するように再調整しようとする過程で生じます。重度の場合、幻覚や発作を伴うこともあり、これらは医療の介入が必要な状態を示しています。
社会的影響:関係性の悪化
依存症は、個人の人間関係に深刻な亀裂を生じさせます。アルコール、薬物、ギャンブルなどへの過度の依存は、家族や友人との関係を破壊し、職場での信頼を損なう原因となるでしょう。
例えば、アルコール依存症の人は、不適切な行動や言動により、家族内や職場でのトラブルが頻繁に生じる可能性があります。ギャンブル依存症の場合、過度の支出は経済的な困難を引き起こし、それがプライベートや家庭内の人間関係の悪化につながります。
これらの問題は、個人が孤立し、周りからのサポートから遠ざかる原因となってしまうのです。
健康への影響:体と心のダメージ
依存症は、肉体的な健康だけでなく、精神的な健康にも損害を与えてしまいます。アルコールや薬物は、長期間にわたる摂取が肝臓疾患、心臓病、脳損傷などを引き起こす原因になります。
精神的依存、特にストレスや不安を緩和するための依存行動は、うつ病や不眠症などの精神的健康問題を引き起こすことがあります。これらの健康問題は、依存症の悪化という悪循環を生み出し、回復をより困難なものにしてしまいます。
否認の問題:自己認識の欠如
依存症の最も大きな障害の一つは、状態を認識し、治療を求めることの遅れです。多くの場合、依存症の人々は、自分たちが問題を抱えていると認識することが難しく、それが病状の進行を加速させます。否認は、家族や友人からの支援を受け入れることを困難にし、治療への道を遠ざけます。
依存症は、その影響が多方面に及ぶため、家族や職場、医療などの包括的な治療アプローチが必要です。個人が自分の状態を認識し、適切な支援と治療を受けることが、回復への鍵となります。
依存症の原因
日常のストレスと孤立
日常生活におけるストレスや孤立は、依存症へと導く重要な要因です。ストレスがかかると、人は精神的、身体的、感情的に負担を感じます。このような状況では、一時的な解放感や安心感を求めてアルコール、薬物、ギャンブルなどへの依存が深まることがあります。
また、孤立感は、特に社会的な支援が欠けている場合、個人を依存行動へと駆り立てます。人間は本質的に社会的な存在であり、つながりがない状態は精神的な健康を害し、不健康な依存への逃避を促してしまいます。これらのストレスや孤立を適切に管理し、健康的な対処メカニズムを身につけることが、依存症の予防と回復には不可欠です。
耐性の発展:増量への道
アルコール、タバコ、薬物などの依存性のある物質を使い続けると、体がその物質に慣れてしまい、同じ分量では前と同じ効果を感じられなくなります。これにより、もっと多くの量を使うようになり、依存症が悪化する原因になります。
依存症を治療するときに、この「体が慣れる」ことをどうにかしないといけないのが大きな課題です。つまり、薬などを少なくするか、やめることができるようにサポートすることが、治療でとても重要となるのです。
脳の報酬系の変化
「脳の報酬系の変化」というのは、依存症が脳にどう影響するかということです。人が楽しいと感じるとき、脳の中の「報酬系」という部分が活動します。
しかし、薬物を使ったり、依存するような行動を続けると、この報酬系がその刺激に慣れてしまい、同じ快感を得るためにはもっと多くの薬物が必要になったり、その行動をもっと頻繁にしなければならなくなったりします。
このように脳が変わってしまうことが、依存症を長引かせたり、治療を難しくする大きな理由です。依存症の治療では、この脳の部分を元に戻したり、健康的な方法で楽しいと感じることを学ぶことが大切になってきます。
遺伝的要素と環境の影響
「遺伝的要素と環境の影響」というのは、特定の遺伝子が依存症のリスクを高めることを意味します。遺伝的要素とは、家族の中に依存症の人がいると、その遺伝子の影響で自分も依存症になりやすいということになるのです。科学的研究により、依存症の家族歴がある人は、そうでない人に比べて依存症になる可能性が高いことが示されています。
しかし、遺伝だけが全てではなく、周りの環境も大きく影響します。例えば、幼少期の経験や、ストレスが多い場所での生活、薬物が手に入りやすい環境などが、依存症の発症に大きく関係してくるのです。
一方で、家族が支え合うことや、友人や社会からのサポートができていると、依存症になるリスクが減少します。
社会的偏見と誤解
社会における依存症への偏見と誤解は深刻な問題です。多くの人々は依存症を、単なる意志の弱さや道徳的欠陥と誤解しています。
これにより、依存症の人々が治療を求めることに二重の障害を感じることがあります。実際には、依存症は脳の構造と機能に変化を引き起こす病気であり、専門的な治療を必要とする医学的状態です。
社会的な誤解を克服し、教育を通じて正しい情報を提供することは、依存症への偏見を減少させ、患者が治療を受けやすくするために不可欠です。
依存症の治療法
断酒と薬物治療:依存症の薬物療法
依存症の治療は多面的なアプローチが求められるもので、その中心の一つが薬物療法です。断酒や薬物使用の中止は、依存症治療の第一歩ですが、多くの場合、薬物療法がこれをサポートします。
薬物療法は、欲求を抑制し、離脱症状を管理し、再発を防ぐために用いられます。例えば、ニコチン依存症にはニコチン置換療法が、アルコール依存症には抗渇望薬が推奨されます。これらの治療は、依存症の患者が健康的な生活を取り戻すための強力なツールとなります。
カウンセリングと精神療法:心のケア
依存症治療において、カウンセリングと精神療法は患者が自己の問題を理解し、新しい対処スキルを学ぶための基盤となります。これらの治療法は、依存症の根底にある感情的な問題や心理的な問題に焦点を当て、患者が自己の行動パターンを認識し、変化させることを助けます。
認知行動療法や動機づけ面接法などの手法が、特に有効であるとされています。
自助グループ:共感と支援のネットワーク
自助グループは、依存症からの回復を目指す人々にとって、貴重なサポートシステムを提供します。アルコホーリクス・アノニマス(AA)やナルコティクス・アノニマス(NA)などのグループは、経験を共有し、互いに励まし合う場を提供します。
このようなグループに参加することで、患者さんは自分だけでなく、他の人々も同じような挑戦に直面していることを知り、孤独感を減少させることができます。
家族療法:全員が関わる回復
依存症は、患者だけでなく、その家族にも影響を及ぼします。家族療法は、依存症の人とその家族が一緒に治療に参加し、依存症が家族に与えた影響を理解し、回復の過程で家族がどのようにサポートできるかを学ぶことができます。
このアプローチは、回復の過程でのコミュニケーションの改善、問題解決スキルの向上、そして家族内の関係の修復を目指します。
ここにある内容は他の人の依存をやめさせるために、家族や周囲の人たちができる最大の行為ですが、それだけで完治を目指すのはとても大変なことです。
あまりに依存が続くなら、どこかで心療内科や精神科の受診などをしていただくのが一番です。
依存症の予防法
自己認識とリスク管理
依存症の予防において自己認識は極めて重要です。自分の行動、感情、そしてそれらが依存行動にどう影響するかを理解することで、リスクのある状況を事前に識別し、適切な対応策を考えることができます。
リスク管理には、ストレスや誘惑の瞬間に対処するための具体的な技術や方法を学ぶことが含まれます。リラクゼーション技術、問題解決スキルの向上、サポートネットワークの構築は、依存症の予防に役立ちます。また、自己認識を高めることで、不健康な依存行動への逃避ではなく、健康的に対処し、選択する力が育まれます。
健康的な生活習慣の促進
依存症の予防と回復において、健康的な生活習慣は基盤となります。バランスの取れた食事、規則正しい運動、十分な睡眠は、身体的および精神的健康を支え、依存症のリスクを減少させます。
趣味や興味を持つことで精神的な満足感を得ることは、不健康な依存への誘惑を避けるのに役立ちます。マインドフルネスや瞑想を実践することで、ストレス耐性を高め、日常生活における意識を向上させることができます。
これらの生活習慣は、依存症からの回復過程だけでなく、日常生活においても大きな利益をもたらします。
家族としての支援:依存症を抱える人々への理解深める
依存症と戦っている人々への家族からの支援は、回復過程において欠かせない要素です。家族が依存症に関する正しい知識を持ち、患者を支援する適切な方法を理解することで、患者の治療と回復が大きく促進されます。
コミュニケーションの改善、適切な境界の設定、必要に応じて医療機関を受診することが重要です。さらに、家族療法に参加することで、依存症が家族関係に与えた影響を修復し、健康的な関係を再構築することができます。
家族が一丸となって依存症に向き合うことは、依存症患者にとって大きな力となります。
出典:
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html
あなたの暮らしをわかりやすく政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201803/2.html
e-Learningで学ぼう
https://www.ncasa-japan.jp/e-learning/assets/pdf/elearning_basic.pdf
依存症に関するマンガ
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