過敏性腸症候群

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群の症状は身体的な苦痛だけでなく、仕事やプライベートな生活にも大きな支障をきたします。つらい症状に悩まされ、対人関係にも影響が出る場合があります。

ここでは過敏性腸症候群の症状や原因、そして治療法や予防法についてご紹介します。

過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群(IBS)は、おなかの痛み、便通異常、腹部膨満感など、様々な消化器症状が繰り返し起こる機能性消化管障害です。
具体的には、内科的な疾患がないにもかかわらず、月に3回以上に渡って腹痛・下痢・便秘などが生じることを言います。

症状の原因は完全にはわかっていませんが、脳と腸の異常な相互作用、つまり“脳-腸連関“が深く関与していると考えられています。生理的、心理的、社会的、環境的な要因が複雑に絡み合い、発症や症状の悪化につながると推測されています。

過敏性腸症候群の一般的な特徴

この病気の大きな特徴は、症状が一時的に良くなったり悪くなったりを繰り返すことです。
ストレス、生理前、気候の変化、食べ物、睡眠不足など様々な要因が引き金となりますが、原因が特定しづらいため、検査で異常が見つからずに長年悩まされる人も多くいます。日本では、約10~15%の人がこの病気にかかっていると推計されています。
しかし、適切な対処と生活習慣の改善により、症状はかなりコントロール可能です。

男性よりも女性に多い?

過敏性腸症候群の症状は、男性に対して女性が1.2~1.6倍多く発症していることが指摘されています。
また、若年層よりも中高年層の発症が多いようです。月経周期の変動による女性ホルモンの影響が、腸の過敏性を高める一因と考えられています。ストレスへの脆弱性の違いも、性差の要因のひとつかもしれません。

ちなみに女性の場合は便秘、男性の場合は下痢になりやすいとされています。

過敏性腸症候群の診断基準

過敏性腸症候群の診断基準は、おなかの痛みや便通異常などの主な症状が最低6か月以上続き、他の消化器疾患が原因でないことです。
医師が詳しい問診、腹部診察、血液検査、内視鏡検査などを行い、潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患)や炎症性腸疾患(人の免疫機構が異常をきたし、自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃してしまうことで腸に炎症を起こす病気)、大腸がんなどの病気を除外して総合的に判断します。症状の経過と病歴から診断することが多いです。

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群

おなかの痛みと張り

過敏性腸症候群の代表的な症状は、おなかの痛みとおなかの張りです。この痛みは排便をすると一時的に良くなりますが、完全におさまることはありません。痛みの程度や部位は個人差が大きく、鈍痛から激しいけいれん性の痛みまでさまざまです。左右どちらの下腹部でも起こり得ます。腹部膨満感やガスがたまる違和感も特徴的な症状です。

下痢と便秘

下痢と便秘を繰り返したり、便の状態が普段と違ったりすることもよくあります。水様便が出る一方で、排便がなかなか出来ない時もあり得ます。食後に症状が出る人が多く、吐き気やむかつき、腹部膨満感を伴う人もいます。症状には個人差が大きく、様々な消化器症状が現れる可能性があります。

症状の程度は様々

症状の重症度にはかなりの個人差があります。日常生活に支障が出るほど激しい症状に悩まされる人がいる一方で、軽い違和感程度の人もいます。同じ人でも時期によって症状の良し悪しが続くこともあります。生理前に症状が著しく悪化する女性や、ストレスが高いとき症状がますます悪くなる人も多くいます。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群

実は明確な原因がない

過敏性腸症候群の症状は、患者ごとに個人差が大きく、日によって変動することが特徴です。明確な異常がないため、一見すると些細な症状にも見えます。
しかし、患者にとっては深刻な身体的・精神的苦痛となっており、その苦しみを理解することが何より大切です。適切な医療的ケアと社会的理解の両面からのアプローチが必要不可欠です。

過敏性腸症候群にはさまざまな増悪因子がある

ストレス、食生活、遺伝的素因が過敏性腸症候群の主な原因ですが、気候の変化、睡眠不足、喫煙、過度の飲酒なども症状の悪化に関わると指摘されています。
また、生理前の女性ホルモンの変動や、月経随伴症状も無視できない重要な増悪因子と言えます。症状の管理が難しい理由がここにあります。

脳と腸の異常な連携

過敏性腸症候群の正確な原因はわかっていませんが、脳と腸の異常な相互作用、つまり“脳-腸連関"の破綻が原因の中心にあると考えられています。脳から腸への指令や、腸から脳への情報伝達がうまくいかないことにより、腸の過剰な運動や痛覚過敏が生じる、と推測されています。

脳-腸連関の具体的なメカニズム

脳と腸の連携が正常に機能していれば、腸は脳からの指令に応じて適切な運動をしますし、腸の状態は脳にフィードバックされ認識されます。しかし過敏性腸症候群では、腸の過剰な運動が起こり、その情報が脳に過剰に伝わるため、腹痛などの自覚症状が生じると考えられています。脳内の神経伝達物質の異常や、腸の神経叢(脊椎動物の末梢神経の基部や末端部で、多数の神経細胞などが枝分かれして網状になっている部分)の過剰な活動なども一因かもしれません。

ストレスは大きな要因

ストレスは、過敏性腸症候群の発症や増悪に最も深く関係する要因と言われています。長期的なストレスにより、自律神経の緊張が高まり、腸の運動が過剰になります。さらにストレスは腸の免疫機能や炎症反応にも影響を与えると考えられており、精神的なストレスへの対処能力が低いことも、発症リスクを高める可能性があります。

食生活の影響も大きい

食生活の乱れも過敏性腸症候群の原因として大きく関わっています。脂質の多い脂っこい食事が症状を悪化させることが分かっています。
また、乳製品や小麦製品などにも注意が必要です。個人によっては、特定の食物が刺激となり、腸の過敏性を高める可能性があります。食物アレルギーや食物不耐症(特定の食品を分解するための酵素が足りないなどの体質により、食べ物を消化できない疾患)の関与も指摘されています。

過敏性腸症候群を悪化させる生活習慣とは?

過度の飲酒や喫煙、不規則な生活リズムといった生活習慣の乱れも、過敏性腸症候群の症状を悪化させる一因となります。睡眠不足やストレスの蓄積、運動不足なども無視できない要素です。特に欧米人に多い食生活は、脂質の過剰摂取につながり、症状を引き起こしやすいと指摘されています。生活スタイル全体を見直すことが大切です。

遺伝的要因も?

遺伝的な要因も過敏性腸症候群の発症リスクに関係していると考えられており、家族に過敏性腸症候群の人がいると、発症確率が高くなる傾向があります。さらに、幼少期の腸の感染症や外傷による影響で、将来的に発症しやすくなる可能性も指摘されています。腸管の神経叢の異常に遺伝的要因が関与しているのかもしれません。

過敏性腸症候群の治療法

過敏性腸症候群

薬物療法が中心

過敏性腸症候群の治療において、中心となるのは薬物療法です。症状に合わせて、便秘型には整腸剤、下痢型には止痢剤が処方されます。強い腹痛時は鎮痛剤や、抗うつ薬、抗不安薬なども使われることがあり、近年、過敏性腸症候群に対する新しい治療薬の開発も進んでいます。例えば、5-HT3受容体遮断薬や胆汁酸トランスポーター阻害薬などです。

薬物治療には限界がある

しかし、薬物療法にも限界があり、必ずしも全ての症状をコントロールできるわけではありません。薬の副作用への懸念もあり、長期的な服用には注意が必要です。そのため、薬物治療に加えて生活習慣の改善や心理療法など、様々なアプローチを組み合わせることが不可欠となります。個人に合った最適な治療法を見つけていくことが重要です。

心理療法も有力な治療法の一つ

近年、過敏性腸症候群の治療において、認知行動療法をはじめとする心理療法の有効性が注目されています。心理療法は、薬物療法と併せて行うことで、より効果的な治療が期待できます。

具体的には、認知行動療法では、患者自身のストレスへの考え方や対処法を見直し、ネガティブな考え方を直すことで、ストレス反応を和らげていきます。療法の過程で、患者は自分なりのストレス対処スキルを習得していきます。
例えば、ストレス場面を冷静に受け止める方法や、緊張をリラックスさせる呼吸法、現実的な思考の仕方などが含まれます。

また、カウンセリングを通じて、過剰な不安や恐れ、病気への過剰反応などのネガティブな感情を吐き出し、整理することができます。カウンセラーは共感的な態度で患者の気持ちに耳を傾けながら、適切なアドバイスを行います。自分の症状をコントロールできるという実感を持つことで、不安が和らぎ、前向きな気持ちになれるよう導いていきます。

さらに、療法の中で日常生活の課題への対処法なども学びます。食事療法の実践方法、規則正しい生活リズムの重要性、ストレス発散の方法など、生活全般に対する具体的なスキルを身につけていくことで、総合的な症状コントロールが可能になります。

生活習慣の改善は欠かせない

薬物療法と並行して、生活習慣の見直しも不可欠な対策です。ストレス解消法を実践したり、症状を悪化させる食べ物を避けたりします。規則正しい生活リズムを心がけ、喫煙や過度の飲酒は控えめにしましょう。適度な運動、瞑想、ヨガなども症状のコントロールに有効です。生活習慣を正しくすることにより、薬の使用量を減らせる可能性もあります。

食事療法

食事療法も過敏性腸症候群の有効な治療法の一つです。症状を悪化させる食品を避け、バランスの取れた食事を心がける必要があります。個人差がありますが、一般的には脂質の多い脂っこい食べ物や加工食品を控え、繊維質を適度に取ることが推奨されています。食物アレルギーや食物不耐症がある場合は特に注意が必要です。

過敏性腸症候群の治療は総合的アプローチが不可欠

過敏性腸症候群には画一的な決め手となる治療法はなく、薬物療法、心理療法、食事療法などを組み合わせた総合的なアプローチが欠かせません。様々な要因が複雑に関係する病気だけに、対症療法だけでなく原因に立ち返った治療が重要と言えます。医師の適切な指導の下、最適な治療法を見つけていく必要があります。

過敏性腸症候群の予防法

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群の予防にはストレスマネジメント能力が鍵

過敏性腸症候群を予防する決め手はありませんが、ストレスをうまくコントロールする能力を高めることが何より大切です。趣味や運動、ヨガ、メディテーションなどでストレスを発散する習慣をつけ、前向きな気持ちを持ち続けることが重要です。ストレスマネジメント能力を高めることは、発症リスクを下げる鍵になります。

過敏性腸症候群の予防には食生活を正しく

食生活の改善も過敏性腸症候群の予防に欠かせません。バランスの良い食事を心がけ、脂質の多い食べ物は控えめにしましょう。個人に合わない食品を避け、規則正しい食生活を送ることが大切です。喫煙や過度の飲酒、生活リズムの乱れも改める必要があります。健全な食習慣を身につけることが、発症リスクを下げる助けとなります。

過敏性腸症候群の子供への影響にも注意が必要

最近の研究で、過敏性腸症候群の発症に小児期の要因が関与している可能性が指摘されています。胎児期や乳児期の栄養状態、抗生物質の使用経験、精神的ストレスなどが、将来的なリスクを引き起こすこととなり得るようです。子供の頃から適切な生活習慣を身につけさせることが、予防につながると考えられています。

過敏性腸症候群には家族の理解と支えが大切

過敏性腸症候群には完治する方法がなく、継続的な対処が必要です。症状の良し悪しを受け入れながら前向きに付き合っていく必要があります。そのためには、家族や周囲の理解と支えが大きな力になります。一人で抱え込まず、寄り添ってくれる人の存在を感じることが、病気と上手く付き合っていく上で重要なポイントです。

過敏性腸症候群への理解と支援体制の構築が望まれる

過敏性腸症候群は、その症状の複雑さや原因の特定が難しいことから、まだ社会的な理解が十分とは言えません。病気に対する偏見をなくし、患者を支援する体制づくりが求められています。医療現場での適切な対応力の向上や、患者会などの活動を通じた啓発活動の推進など、さまざまな取り組みが望まれます。

過敏性腸症候群患者への社会的配慮が必要不可欠

過敏性腸症候群は身体的苦痛だけでなく、社会生活にも深刻な影響を及ぼします。患者が職場や公共の場で適切な配慮を受けられるよう、社会全体での理解を深めることが求められます。トイレの確保や、急な症状の変化への対応など、細やかな配慮が何より大切です。病気を持ちながらも尊厳を持って生きられる環境づくりが重要な課題となっています。

過敏性腸症候群への包括的なアプローチが求められる

過敏性腸症候群への対策は、医療だけでは不十分であり、社会全体で取り組む必要があります。患者支援団体の活動を後押しし、医療従事者への正しい知識の普及を図るなど、様々な施策が求められています。身体的、精神的、社会的な側面から総合的に取り組むことで、患者の生活の質の向上が期待できます。行政をはじめ、あらゆる分野での協力が不可欠と言えるでしょう。

出典:
過敏性腸症候群(IBS) | しおや消化器内科クリニック | さいたま市中央区 与野本町駅
https://www.shioya-clinic.com/disease/ibs/

過敏性腸症候群 セルフチェック、症状と原因、その治療について 帯広・十勝の内視鏡検査 新井病院
https://arai-hospital.jp/contents/shitsubyo/kabinseichoshokogun.html

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ゆうメンタルクリニックでは過敏性腸症候群に関するマンガを執筆しています。

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官越いやし|ゆうメンタルクリニック心療内科・精神科

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