不眠症
寝たいのに寝られないというのは、とてもつらいですよね。
慢性的な睡眠不足になると、集中力の低下、判断力の低下、血圧が上がる、免疫機能の低下などが生じます。
不眠症の症状や原因、そして治療法や予防法についてご紹介します。
不眠症とは?
不眠症は、睡眠に関する一連の問題を指します。具体的には、眠りにつくまでに時間がかかる「入眠障害」、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、朝早くに目覚めてその後眠れなくなる「早朝覚醒」といった症状があります。
これらの症状は、日中の慢性的な疲労感、集中力の低下、情緒不安定、食欲不振などを引き起こし、日常生活に大きな影響を与えます。不眠症は、短期間で自然に解消されることもありますが、慢性化すると自力での改善が難しくなります。
ストレス、身体的な健康問題、薬剤の副作用など、さまざまな要因によって引き起こされるため、原因に応じた適切な対応が必要です。長期にわたる不眠は、眠れないことへの不安や恐怖を生み、さらに睡眠を妨げる悪循環に陥ることがあります。
解決策を見つけることが難しい場合は、専門の医療機関での相談を検討しましょう。現代における睡眠薬は、適切に管理された使用により安全性が高く、効果的な治療手段の一つとされています。
- 入眠障害
- …眠りにつくまでに時間がかかる
- 中途覚醒
- …夜中に何度も目が覚める
- 早朝覚醒
- …朝早くに目覚めてその後眠れなくなる
- 熟眠障害
- …睡眠時間は十分なのに眠りが浅い
これらの問題によって、日中の疲労感、意欲の減少、注意力の散漫、食欲不振などの問題が生じます。不眠症には、長期間にわたって睡眠問題が続く「慢性不眠症」と、一時的な状況や特定の出来事によって生じる「短期不眠症」の主要な2つのタイプがあります。
不眠症の診断基準
不眠症を診断する基準は明確です。週に3回以上、寝つけない状態や日中の疲れが3カ月以上続く場合、これを慢性不眠症と定義します。しかし、これらの症状が3カ月未満であれば短期不眠症と考えられます。この基準に基づき、専門の医師は適切な診断と治療法を提案することができます。
データでみる不眠症
皆さんは日本で不眠症にお悩みの方がどのくらいかご存じでしょうか。
実は成人の約30%から40%が悩まされており、特に女性に顕著な傾向があるようです。さらに約5%が不眠と感じ、睡眠薬を利用しているそうです。そして全体のうち、約10%が慢性的な状態になっています。
原因としてはストレス、アルツハイマー病や脳腫瘍などの神経系疾患、アルコールの過剰摂取、または薬物の副作用など幅広く考えられます。
年齢を重ねていくと不眠症の症状は増える傾向にあり、60歳以上の方の中には半数以上が不眠の経験があると報告されています。
また東日本大震災や新型コロナウイルスなどのような自然災害・パンデミックが発生すると、一時的に不眠症の患者さんが増加します。
このことからも、不眠症は決して珍しいものではなく誰しもが経験するものといえます。
不眠症の症状
寝つきが悪い: 入眠障害
入眠障害は、就寝後にすぐに眠りにつけない状態を指します。多くの人が経験するこの問題は、日々の悩みやストレス、夜遅くまでのスクリーンの光など、さまざまな原因によって引き起こされます。睡眠環境を改善することや、就寝前のリラックスタイムを設けることで、症状を軽減させることができます。
夜中に目が覚める: 中途覚醒
中途覚醒は、一度眠りについた後に夜中に目覚めてしまうことを言います。これはストレスや不快な睡眠環境、身体的な不調などが原因で起こります。良質な睡眠を確保するためには、寝室を暗く静かに保つ、寝る前にリラックスする時間を作るなどの工夫が有効です。
早朝に目が覚める: 早朝覚醒
早朝覚醒は、計画した時刻よりもずっと早く目が覚めてしまい、その後再び眠ることができない状態を指します。
この症状は、睡眠周期が短くなることで生じる不眠症です。主な原因としては、心理的ストレスや不安、生活環境の変化、身体的な健康問題などが考えられます。
眠りが浅い: 熟眠障害
睡眠が浅いとは、深い睡眠に入りにくく、少しの物音や体の動きですぐに目覚めてしまう状態を言います。
この状態では、睡眠中に必要な深い休息を得られず、翌朝には身体的・精神的な疲労感を感じることが多くなります。
生活リズムの不規則さ、適切な運動不足、または就寝前の電子機器の使用が主な原因です。
日中の過度な眠気や倦怠感
日中に感じる過度な眠気や体のだるさは、夜間の睡眠の質や量が不足していることの兆候です。この症状は、効果的な仕事や学習、日常生活において集中力の欠如を引き起こす可能性があります。原因としては、睡眠障害、ストレスの蓄積、身体活動の不足などがあります。
不眠症の原因
ストレスと不眠症
現代社会では避けられないストレスが、不眠症の大きな原因の一つです。
仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安など、心配ごとが尽きないと、夜になっても心が落ち着かず眠りにつきにくくなることがよくあります。ストレスは交感神経を活発にし、体を覚醒状態に保つことで、安らかな睡眠への移行を阻害する原因となります。
リラックスを促す活動や、ストレス管理のためのテクニックを学ぶことが、不眠症の改善に有効です。
生活習慣と不眠症
現代の生活習慣は、夜遅くまで続くデジタルデバイスの使用や、カフェインの摂取、そして不規則な睡眠スケジュールなど、不眠症を引き起こす原因がたくさんあります。
特にスマートフォンやテレビから放出されるブルーライトは、脳を刺激してメラトニンの分泌を抑え、睡眠の質を低下させます。
カフェインは神経を刺激し、眠気を遠ざけるため、夜間の摂取は避けるべきです。また、一貫性のない就寝時間は、体内の生物学的リズムを乱し、睡眠パターンを不安定にする要因となります。
健康的な生活習慣を心掛けることで、睡眠の質を向上させることができます。
心身の疾患と不眠症
心の健康問題、例えばうつ病や不安障害、または慢性的な痛みを引き起こす身体的な病気がある場合、それが睡眠に悪影響を及ぼすことがよくあります。
これらの病状は、深夜に何度も目を覚ます、眠りが浅いなど、不眠症へと直接つながる可能性があります。
健康に何らかの問題を抱えていると感じたら、早期に医療の専門家に相談し、適切なアドバイスや治療を受けることが大切です。
不眠症の根本的な原因に対処することで、睡眠の質を向上させることが期待できます。さらに、心のストレスを軽減するために、家族や友達と積極的に話をすることが、不眠症の改善に寄与することがあります。
心と体の両方の健康をケアすることで、より質の高い睡眠へと導かれるでしょう。
薬剤の副作用による不眠
医薬品はさまざまな病状を改善するために役立ちますが、その中には睡眠障害を引き起こす副作用を持つものもあります。
特に、風邪やアレルギー治療薬、高血圧に用いられる薬が、睡眠パターンを乱す原因になることがあります。
これらの薬を服用してから不眠に悩むようになった場合、その影響を受けている可能性が高いです。
このような状況では、治療を担当する医師に症状を報告し、相談の上で薬の変更や服用スケジュールの調整を検討することが重要です。
適切な対応を取ることで、不眠症状の改善につながる場合が多く、治療の質の向上にもつながります。副作用による睡眠の問題は、医師との協力すれば解決できます。
睡眠環境の影響
寝室の環境が睡眠に与える影響は大きいです。
過度に明るい光や騒音は、深い睡眠を妨げる主な原因となります。
就寝前には部屋を適度に暗くし、静かな環境を整えることが大切です。さらに、寝具選びも睡眠の質に直接影響します。
自分の身体に合ったマットレスや枕を選ぶことで、より良い睡眠を得ることができます。
不眠症の治療法
生活習慣の見直し
生活リズムが乱れていると不眠を引き起こすことがあります。
毎日決まった時間に就寝し起床する習慣をつけることが重要です。夜遅くのカフェイン摂取や、寝る前のスマートフォン、テレビ画面の使用は避けたほうが良いでしょう。
身体を動かす活動も睡眠の質を向上させますが、就寝前の過度な運動は控え、日中に軽い運動を取り入れることが望ましいです。
認知行動療法
認知行動療法は、慢性不眠症の改善に役立つ自己実施可能な方法です。
この療法は、不健康な睡眠に対する考え方や行動パターンを見直し、改善することを目指します。具体的には、次の三つのステップが推奨されます。
- 1眠くなるまでベッドに入らない
- ベッドを快適な睡眠の場所として認識させるためです。無理にベッドで過ごすと体がベッドを睡眠の場所だと認識しにくくなります。
- 2睡眠効率を高める
- 睡眠効率は、ベッドにいた時間に対して実際に眠れた時間の割合です。85~90%を目標にしましょう。この効率を把握するために、睡眠日誌に記録するのも良いです。
- 3リラクゼーションのための簡単な体操や筋弛緩法を取り入れる
- 寝る前や夜中に目が覚めてしまったときに、リラクゼーションのために簡単な体操や筋弛緩法を取り入れましょう。全身をリラックスさせることは睡眠の質を向上させるのに有効です。
薬物療法の選択
不眠症治療における薬物療法は、症状の重さや原因に応じて、医師によって慎重に選択されます。
睡眠を促す薬、睡眠の質を改善する薬、リラックスを助ける薬など、目的に応じた多様な薬が存在します。しかし、これらの薬には眠気やふらつきといった副作用があるため、通常は短期間の使用が良いとされます。
また、医師の指示に従って、薬を適切なタイミングで適切な量だけ使用することが重要です。不眠症の根本的な改善には、薬物治療だけでなく、睡眠環境の整備やストレス管理のための認知行動療法といったアプローチが効果的であり、これらを組み合わせた治療がすすめられています。
専門医の診断と治療
不眠症で困っているなら、まずは睡眠専門医や精神科・神経科の専門医に相談することが大切です。
専門医は患者の具体的な症状や生活習慣、心理状態などを詳細に聞き取り、必要であれば睡眠の質やパターンを調べるための検査を実施します。
その結果をもとに、一人ひとりに合わせた最適な治療計画を立ててくれます。
治療方法は薬物療法だけでなく、生活習慣の見直しや認知行動療法、リラクゼーション技法など、多角的にアプローチすることで、より効果的に不眠症を改善できる可能性があります。
自己判断で薬を飲むのではなく、専門家の診断と指導のもとで治療を進めることで、安全かつ健康的な睡眠を取り戻すことが期待できます。
不眠症の予防法
適切な睡眠環境の整備
睡眠の質を高めるためには、部屋の環境を整えることが非常に重要です。
部屋を理想的な睡眠空間にするには、まず、部屋を暗く保つようにしましょう。暗闇はメラトニンの分泌を促し、睡眠にはいりやすくなります。
また、部屋を静かにし、外部の騒音を遮断することも大切です。騒音を防ぐのが難しい場合は、耳栓を使用するのも一つの方法です。
さらに、快適な室温は睡眠の質に影響を与えるため、冷暖房を適切に調整し、自分に合った室温に保つことが推奨されます。
寝具に関しては、体をしっかりと支えるマットレスと、自分の首や頭にフィットする枕を選びましょう。寝る前の電子機器の使用は避け、リラックスできる読書や軽いストレッチを取り入れると、眠りにつきやすくなります。
リラックス技法の活用
日常生活のストレスが睡眠障害の原因となることがあります。
ストレスを解消しリラックスするためには、深呼吸や瞑想、ヨガといった技法が有効です。これらの技法は、心を落ち着かせるだけでなく、身体の緊張をほぐし、睡眠へと導く効果が期待できます。
特に、就寝前に行う瞑想や軽いヨガは、心身のリラクゼーションに役立ちます。
また、好きな音楽を聴く、アロマセラピーを利用するなど、自分に合ったリラックス方法を見つけることも大切です。リラックス技法を生活に取り入れることで、睡眠の質を向上させることができます。
不眠症との向き合い方
不眠症と付き合っていく
不眠症は単なる睡眠不足とは違い、様々な問題によってあらわれる複雑な症状です。
そのため対処法などもそれぞれ違います。
まずは寝起きの時間を一定にしたり日光を浴びたりできることから実践していきましょう。
そのうえで、睡眠時間にこだわらないことも念頭に置いておきましょう。
睡眠時間には個人差があるため「〇〇時間寝なければいけない」という目標はかえってプレッシャーとなり睡眠の妨げになります。
実践してみたうえで改善されないようであれば、かかりつけ医に相談することをおすすめします。医師に相談するだけでも眠れない恐怖は和らぐものです。
不眠に対する心配な気持ちが症状を悪化させ、さらにはうつやストレス性疾患など別の問題も引き起こします。眠れないことを一人で抱え込まないことがなにより大切です。
医師は症状の原因を特定し、個々に合った治療法を提案してくれます。重要なのは、一人で抱え込まず、周りのサポートを積極的に求め、共に解決策を探る姿勢を持つことです。
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