パニック障害

パニック障害

不意に強い恐怖や不安を感じる「パニック発作」を繰り返す精神的な障害です。
ここではパニック障害の症状や原因、そして治療法について解説します。

パニック障害とは

パニック障害を患うと、場所や時間などに関係なく、突然動悸や息苦しさや、強い恐怖感や焦燥感を伴う発作が繰り返し起こることがあります。
このような症状は「パニック発作」と呼ばれ、パニック発作に襲われる場面を避けたり、またパニック発作が起きたらどうしようと心配することで、日常生活に支障をきたしてしまいます。

パニック障害を患ってしまった場合は、抗うつ剤による薬物療法認知行動療法などの治療法が有効であるとされています。

パニック発作はとても身近

パニック発作自体は誰にでも起こり得る症状で、1年間の内だけでも成人の11%ほどが経験すると言われています。
多くの人は治療を受けなくてもパニック発作は収まりますが、少数の人はパニック障害として進行してしまいます。

さらにパニック障害へ発展してしまう人の割合は、全体の2~3%ほどと認められています。
特に女性に多く、男性の約2倍の頻度で発生しているそうです。

20~30代頃と、比較的若年層の発症率が高いようです。

また、国内の患者数は1996年には約3千人ほどでしたが、2017年には8万3千人にまで増え、以降も増加傾向にあります。

パニック発作を引き起こす"不安"や"恐怖"

パニック発作を引き起こしてしまう要因に、不安や恐怖があります。

まず、パニック発作が起きたらどうしようとなる不安状態を「予期不安」と言います。
突然起こる動悸や息苦しさは、「死んでしまうんじゃないか」、「気が狂いそうだ」と思ってしまうほど耐えがたく苦痛なものです。病院で検査をしても検査値に異常は出ません。しかし、パニック発作はその後も起きてしまうため、「また発作が起きるのは嫌だ」と極度の不安状態となってしまうのです。

また、発作によって外出が怖くなってしまう状態を「広場恐怖」と呼ばれています。

パニック障害になってしまうと、車や電車などといった、発作が起きたときに助けを求めにくい状況になることを避けるようになります。
すると、一人で外出することが困難になってしまい、学校や会社などに行けなくなってしまうことがあります。広場恐怖がひどくなると、いわゆる「ひきこもり」と呼ばれる状態に至ってしまう場合もあります。

パニック障害の判断基準

医師はまず、他の病気によってパニック発作に似た症状が引き起こされていないかの確認を行います。特にパニック発作で見られる動悸や吐き気などは、パニック障害ではなく他の重篤な身体的な病気によって引き起こされている可能性もあるからです。

身体的に重篤な病気が認められなければ、下記のいずれかが1ヶ月以上続いているかどうかで、パニック障害を判断します。

  • パニック発作がまた起こるのではないか、または発作の結果(正気失うなど)に対する持続的な心配
  • パニック発作の原因になり得る状況の回避など、パニック発作による行動の変化

パニック障害は長引いてしまうと、日常生活に支障をきたし、またうつ病へ発展する可能性があるため、専門医による早期の診断が大切です。

パニック障害の症状

パニック障害

身体症状

パニック障害において、代表的な身体症状は以下の通りです。

  • 動悸がする、脈拍数が上がる(頻脈)
  • 息が苦しい、窒息感、呼吸困難
  • 胸の痛み、不快感
  • ほてり、悪寒
  • 吐き気
  • 腹痛、下痢
  • 発汗
  • 身体の震え

パニック発作の身体症状は、心臓や肺など重要臓器に関わるものが多く極めて不快なものになりますが、いずれも命を脅かすほど危険なものではありません。

精神症状

パニック障害において、代表的な精神症状は以下の通りです。

  • 死ぬことへの恐怖感
  • 非現実的感、この世にいないような感覚
  • 正気を失うことへの恐怖感
  • めまい、頭がくらくらする感じ

パニック障害では、身体症状・精神症状のうち4つ以上、突然現れるとされています。

それぞれの症状は数分程度で消失することがほとんどです。
また、頻度は大きな個人差があり、毎日発作が起こる人がいれば、1回発作が起こると数カ月間症状が現れない人もいます。

パニック障害の原因

パニック障害

過労やストレス

パニック障害の原因は明らかになっていませんが、「過労やストレス」が大きく影響していると言われています。

人間は強いストレスを感じると、脳内のノルアドレナリンなどの脳内伝達物質が増加します。脳内伝達物質が増加することで、神経が以上に興奮してしまいます。
この興奮が起こることで、ストレスへの防衛反応として動悸やめまいなどの症状を引き起こしてしまうのです。

セロトニンの減少

過労やストレスによりノルアドレナリンが増加すると、これを鎮めるためにセロトニンという別の脳内伝達物質が使われます。

セロトニンは他の脳内伝達物質をコントロールし、精神を安定させる役割があります。

ノルアドレナリンによる興奮状態により、セロトニンが減少します。
こうしてセロトニン量が変動すると気持ちが不安定になり、結果パニック発作につながってしまうのです。

性格や考え方

人に対するストレスの受け止め方は、性格や考え方などによって変わってきます。
中でも、パニック障害の患者の性格として多いのは、以下の2点だそうです。

  • 不安に対して過敏である
  • 物事を否定的に捉えがちである

一方で、「まじめで責任感がある」といった見方もできるため、一概に悪い性格とは言い切れません。

しかし、周りからの評価を気にすることで不満を溜め込みがちだったり、上記性格のマイナスな面だけが目立ってしまい、結果周囲と馴染めずパニック障害へと発展してしまう場合があります。

タバコやカフェインなどの嗜好品

タバコやカフェインといった嗜好品も、パニック障害のリスクを高めてしまいます。

タバコに含まれるニコチンは依存性が高く、タバコを吸わないと不安やイライラを強めてしまいます。
また、タバコは呼吸機能を低下させるため、呼吸器に関わる身体症状を発症しやすいとされています。

一方で、カフェインは「興奮物質」に分類されます。
カフェインによって交感神経が刺激され、緊張状態が高まることで不安状態へと発展してしまい、結果パニック障害の要因となってしまいます。

パニック障害の治療法

パニック障害

薬物療法

薬物療法は、パニック発作を抑えることで、同時に予期不安を軽くするために用いられます。

パニック発作には抗うつ薬の一つであり、副作用が少ないSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に使われています。

しかし、SSRIは副作用が少ない分、効果が現れるまで1~2週間ほどかかることが多く、根気強く服用を続ける必要があります。

また、少ないとはいえ、SSRIはめまいや眠気などの副作用が確認されているため、医師としっかり相談したうえで服用するようにしましょう。

認知行動療法

パニック障害の治療には、認知行動療法も重要です。

認知行動療法は薬物療法と並行して行われることが多く、患者の誤った考え方(認知)を少しずつ正していく治療法です。

パニック障害を患う人は、発作が起こると「死んでしまう」といった誤った考え方を持ってしまうため、カウンセリングを通じてこの考え方を矯正していくことになります。

曝露療法

曝露療法も行動療法の一つですが、まず患者さんにパニック発作が起きた状況や場所をいくつか挙げてもらいます。
そして患者さんにとって比較的軽度な状況を再現・経験すること(曝露)で、恐怖感を克服していく治療法です。

曝露療法は、恐怖感が無くなるまで行われますが、ここで無理をしすぎてはいけません。
その人の症状に合わせた訓練を段階的にこなしていくことが、最も大切です。

パニック障害の予防法

パニック障害

パニック障害の早期発見

パニック障害は、ひどくなる前に早期に発見し治療していくことが大切です。

パニック障害は検査をしても異常が出にくく、治療が遅れやすいです。
また、治療自体が不十分・不適切な場合は慢性化してしまうことがあります。

さらに、パニック障害が悪化してしまうと、うつ病やアルコール依存症など、他の精神疾患を誘発してしまう恐れがあるため、早期に専門家に相談することをおすすめします。

疲労やストレスを溜めない

疲労やストレス、睡眠不足などはパニック発作を引き起こしやすくするため、休養を十分とったり気分転換をするようにしましょう。

気分転換には、「軽い運動」がおすすめです。運動は自律神経を整えてくれますし、太陽光を浴びればセロトニンの原料となるビタミンDが体内で生成されるからです。
なお、運動は体調が良くなってきてから、できる範囲で行うことが大切です。

一方で、気分転換と言っても、アルコールやカフェインはパニック発作を悪化させる可能性があるため、摂りすぎには注意が必要です。

パニック障害との向き合い方

周囲にパニック障害の人がいたら、まず「パニック障害を理解すること」が大切です。パニック発作というものは、どうしてもつらさや不安が理解されにくいものです。また、パニック障害に限らず、精神疾患は「気の持ちようで治る」と思われがちですが、これは間違いです。まずは、パニック障害について正しい知識を身につけることで、患者さんの不安が理解しやすくなります。

他に、「そばにいて、いつも通り接する」ことも有効です。病気なんだからと、腫れ物に触るような接し方だとお互い気疲れしてしまいます。また、パニック発作を起こしてしまったら、なるべくそばにいて安心させてあげましょう。パニック発作は強い不安感を伴うことが多いため、少しでも安心感があると症状も良くなっていくでしょう。

出典:
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html

MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/10-%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E4%B8%8D%E5%AE%89%E7%97%87%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E7%99%BA%E4%BD%9C%E3%81%A8%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E7%97%87

日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=43

厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/8432

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